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ブラックホール

新聞にもwebニュースにもM87星雲の中心にあるブラックホールの撮影に関する記事が目立ちます。以下、毎日新聞web版から引用します


********引用開始**********

ブラックホールの撮影に成功 世界初 一般相対性理論を証明
4/10(水) 22:07配信 毎日新聞

s-m87blackholl.jpg 
M87銀河の中心にある巨大ブラックホールの影
(中央の暗い部分)をとらえた画像=国立天文台
など国際研究チーム提供


世界で初めてブラックホールの影を撮影することに成功したと、日米欧などの国際研究チームが10日、発表した。ブラックホールの存在は約100年前にアインシュタインの一般相対性理論によって予測されたが、強大な重力で光さえも外に出られないため、観測が難しかった。研究チームは高解像度の電波望遠鏡を利用してブラックホールのごく近傍のガスが発する電波を精密に観測し、影絵のようにブラックホールを浮かび上がらせた。
一般相対性理論の正しさを証明するとともに、銀河の中心にあると考えられてきた巨大ブラックホールを直接確認した成果。ブラックホールの影の大きさから質量などを算出し、銀河の起源や進化を解明する重要な手がかりとなる。

チームは2017年4月、おとめ座の方向にあり、地球から約5500万光年離れた楕円(だえん)銀河「M87」の中心にあると考えられていた宇宙最大級のブラックホールを観測。南米チリにある「アルマ」をはじめハワイ、南極など世界6カ所にある8台の電波望遠鏡の観測データを約2年かけて慎重に解析した。

その結果、ブラックホール周辺部のガスがリング状に輝き、中心が影のように暗くなっている画像が得られた。リングの直径は約1000億キロで、そこからM87の中心にあるブラックホールの質量は太陽の約65億倍だと算定できるという。

プロジェクトには約200人の研究者が参加。日本の研究者の代表を務める本間希樹(まれき)・国立天文台教授(銀河天文学)は「誰もその姿を見たことがなかったブラックホールの姿を撮影でき、アインシュタインの一般相対性理論を裏付ける結果となった。過去100年にわたる物理学的、天文学的な問いに対する明確な答えだ」と話した。【斎藤有香】

◇ブラックホール
極めて高密度、大質量で重力が非常に強く、周囲にあるガスなどの物質を引き込む天体。光の速度でも脱出できない。角砂糖の大きさで地球ほどの質量を持った物体はブラックホールになるとされる。重い星が一生の最後に自己の重力によって収縮してできるタイプのほか、銀河中心に巨大ブラックホールがあると考えられているが、巨大ブラックホールの成因はよく分かっていない。

********引用終了**********


記事の主旨に関しては特に感じることもないが、ブラックホール自体の説明には少し違和感を覚えます。赤字で記載した部分です。
説明が全く間違っている訳ではないが、大事な記載が抜けています。「重い星が自己の重力によって収縮していく」という表現だけでは、我々が3次元的に認識してる空間で起きているように錯覚させるからです。星が重力で収縮するのは事実ですが、収縮した星がブラックホールになるのは単に重いからではなく、星の重力が周囲の空間を歪ませ、究極まで増大すると、やがて空間が閉じてしまうからです。その概念が前出の説明には表現されていない。


空間が重力で歪むという概念は一般的には理解し難いものです。以下の模式図は、分かりやすくイメージさせるために工夫した絵図です。

2dkuukannhizumi.jpg 
重力が周囲の空間を歪める様を2次元で表現した場合

上図は空間を2次元の網目として表現している。トランポリンの上に砲丸投げの鉄球を落とした時をイメージすればよいでしょう。トランポリンの表面が空間です。


3dkuukannhizumi.jpg 
重力が周囲の空間を歪める様を3次元で表現した場合

上図は空間を3次元で表現していますが、局所的に見れば2次元の場合と同じです。
どちらも背景に星が描かれています。星から放たれた光になったつもりで書くと、光自身はまっすぐ進んでいるつもりでも、空間の外側から見ると、空間自体が曲がっているので、光も曲がりながら進んだように見えます。これを重力レンズ効果と呼ぶ場合があります。
網目の線に沿って進む光は、地球付近で歪みのために僅かに地球に近づきながらカーブを描いて進むわけです。それを観察できる人は空間の外側にいる人(=神の眼)か、十分離れた距離にいる観察者だけです。地球のそばに宇宙飛行士がいても光は何の影響も受けなかったように見えると思います。光の進路も宇宙飛行士のいる空間も、局所的に見れば均等に歪んでいるので認識できないからです。


重い星が自己の重力によって収縮していく」というのは、2次元の図で云うと、3次元的な表現になってしまうが、空間の凹みがどんどん深くなるということです。これは星の表面重力の増大を意味し、ある限界を超えると、その凹みはキンチャクのようなイメージで空間が閉じてしまいます。光が重力に引っ張られて出られないのではなく、空間が閉じているから出られないのです。
光は、粒の性質と波の性質を併せ持っていますが、質量を持たないので、重力に引きつけられる事はありません。しかし、空間が曲がっていれば、曲がったなりに進み、閉じていれば通過することはできないのです。
空間は閉じていますから、もはや何者も脱出する事は不可能ですが、不思議な事にブラックホールに向かっては物質が落ち込むことは可能です。宇宙空間のガスなどが落ち込む瞬間には電磁波(電波)を放ちます。新聞記事にある画像は、その電磁波を地球各地の電波望遠鏡で同時観察し、画像化したものです。今回の観測では撮影できなかった模様ですが、ブラックホールには、そこから吹き出すジェット現象を伴う場合も多い。しかし、発生メカニズムなどは解明されてはいないようです。


ここで、新聞記事からはちょっと離れます。
質量を持つものは重力を発生させますが、質量を持つ物質自体が何かを引っ張る力を持っている訳ではありません。リンゴは地球の重力で落下するが、厳密に言うと地球に引っ張られている訳ではない。リンゴは地球が歪ませた空間(凹み)に落ち込んでいるのです。もちろん、リンゴにも質量がありますから、空間を微量に歪ませています。見方を変えればリンゴの作る空間凹みに地球が落ち込んでいるとも言えます。しかし、質量とは物質の「動きにくさ」を表していますから、リンゴと比較すると圧倒的に重い地球よりリンゴのほうが動きやすいので、地球に向かって落ちるように見えるわけです。繰り返しますが、質量を持つ物体が根源的に物を引きつける力を持っている訳ではないということ。空間自体の歪み(凹み)が互いに引き合う力を発生させているということです。


新聞記事ではアインシュタインの相対性理論が実証されたという表現が何回も使われています。これでは、アインシュタインがブラックホールを予言したと誤解する人が出てきそうです。その存在をアインが提唱した理論方程式から推定したのは、カール・シュワルツシルトであるのは周知です。アインもシュワルツシルトの数学的な特殊解を否定はしなかったが、実際には存在しないと考えていた。
アインが唱えた相対性理論とは重力の根源は空間の歪みによって発生するという理論が主旨であり、ブラックホールの存在は理論から導かれた特殊な状況に過ぎない。誤っているわけではないが、ブラックホール≒相対性理論のようなニュアンスで表現するのは、本来のアインの理論をスポイルしているような気がします。また、相対性理論の正しさは、他の事象から既に証明されているものであって、今回の成果がなし得た訳ではありません。

4dkuukannhizumi.jpg 
地球が作る空間の凹みに落ち込もうとする月

月がリンゴのように地球に落ちてこないのは、引きつけ合う力と月の公転による離れようとする力が釣り合っているからでしょうか。でも公転周期は徐々に落ちており、やがて月も地球に落ちてくることでしょう。





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宇宙連邦軍に入ると

私が中学生の頃は、アメリカのテレビ番組『スタートレック』がありました。日本版の名前は『宇宙大作戦』だったかな? そのせいか、大人になっても『スターウォーズ』は単なる宇宙チャンバラで夢がなくて興味が湧かなかった。




いまでも、ネット配信サイトでスタートレック・シリーズはたまに見ます。でも、リアリティは増したが、昔のような夢のある要素は失われつつありますね。
昔から変わっていないのは、宇宙船が光速を超えて飛ぶことが出来る点ですが、アインシュタインの特殊相対性理論(原理)を無視してるのは面白い。慣性力で移動する物体は光速度を超えることは出来ないそうです。
また、地球の周回軌道を離れたエンタープライズ号が光速に近い速度で飛行すれば、乗船してる人には感じられませんが、地球から見たら船内の時計の進行は遅くなります。地球に帰還したときには時計が遅れた分だけ、地球の時間が進んでいます。宇宙船で1年も飛行していたら地球では数百年が経過しているかも知れない。元の世界には戻れない訳です。
実際に月に言った宇宙飛行士は地球に帰ったとき、原子時計で測れるレベルですが、彼の時計は遅れていることが証明されています。宇宙には絶対的な唯一の時計が無いんですね。ブラックホールの近くでも時計は遅れているそうです。重力と速度によって時間の進み具合は変わり、普遍ではないようです。また理論物理学の研究者は、光速に近い速度を出せる宇宙船で未来には行けるが、過去に戻ることは不可能であろうと予測していました。




つまり、エンタープライズ号に乗る時は、地球に残した家族には会えない可能性が多きい。例え帰還できても、宇宙船は過去の遺物だし、そもそも地球は滅んでいるかも知れない訳です。あまり宇宙連邦軍には入りたくないですね!



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関東平野北西縁断層帯

ニュースで連日、地震災害の状況が放映されているが、他人事ではない。日本に活断層の無い地域などめずらしいのだ。関東の北部にも有名な「関東平野北西縁断層帯」がある。
これは、過去群馬県で詳しく調査されたことがある。埼玉北部から群馬県の藤岡市、高崎南部地域まで伸びている長い活断層です。私の家の下まで伸びているのだろうか?
高崎~前橋地域は地震が少ない地域だが、だからといって安心は出来ない。発生していない分、ひずみエネルギーが蓄積されていると思ったほうがよいのかも知れない。既知の活断層が今のところない前橋に引っ越したくなってきたが、数キロ離れても効果はないだろうか。



北関東の断層帯と過去の地震発生図




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ウイルスでやっつける癌治療(3)

 
 
3回目は遺伝子操作されたヘルペスウイルス「G47デルタ」の実効性と安全性について触れます。

G47デルタはアメリカで開発されたG207の改良版であることは最初に記載したが、
基礎実験では、G47デルタはG207 に比べ、10 倍の抗がん効果を発揮するそうだ。また、動物実験による安全性試験では、G47デルタはG207 と少なくとも同等の安全性が確認されているので非常に期待できるウイルス製剤だという。現在、人間への臨床実験も始まったので近い将来認可される可能性が高い。
 
しかし、素人にとって生物の遺伝子操作と聞くと非常に不安な思いがあるのは事実。増してや、それがウイルスとなれば、非常に危険なウイルスがはずみで出来てしまうのではないかという不安がよぎる。それほど危険ではなくても、遺伝子操作されたヘルペスウイルスに感染したときに従来の治療で対応が可能なのかという疑問もあるだろう。これらの疑問についても、テレビ番組の中では簡単に解説されていた。
 
口唇ヘルペスのウイルスは元々伝染性の強いウイルスではないので感染を防ぐのは遺伝子操作されたウイルスでも容易だという。通常の環境中でも極めて弱いウイルスで、紫外線照射や高温蒸気滅菌はもちろんのこと、消毒用アルコールをはじめとする通常の消毒薬で速やかに死滅するそうだ。 
 
また、万が一、医療従事者に感染したとしても、前回の遺伝子操作の効用で説明したように、人間の正常細胞で増殖は出来ないので、癌患者でも、正常者でも、感染が広がる恐れはないという。
 
さらに、G47デルタが自然界で変異して恐ろしいウイルスに変化していく恐れがない
かという疑問がある。しかし、これも人ゲノムというのは、人工的変異であれ、自然変異であれ、ゲノムに変異が加わると必ず弱毒化するという基本性質があるそうだ。
 
G47デルタは、3つのウイルス遺伝子に人工的変異があるため、正常細胞に対してはすでに著しく弱毒化しており、自然変異が加わってウイルスが強くなることはあり得ないという。例え、そのウイルスが自然界で生き延びたとしても、人工変異させたゲノムが自然に元に戻る可能性もゼロだという。
 
世の中に絶対なんて事はあまり無いと思ったほうが安全ですが、取りあえず現在の
遺伝子操作技術のレベルで安全保証は可能ということ。もっとも、癌患者から見れば、治療を躊躇する余裕がないのも事実。例え、リスクの可能性があったとしても頼りたいのが心情であろう。
 
 
 
 
【参考・引用】
■NHK教育テレビ『サインエンスZERO』番組
■『東京大学医学部附属病院トランスレーショナルリサーチセンター』ホームページ
 
 
 

ウイルスでやっつける癌治療(2)

 
 
2回目は「G47デルタ」と呼ばれるヘルペスウイルスの作用メカニズムについて触れます。「G47デルタ」は、遺伝子操作によって、約80個あるウイルスの遺伝因子のうちの3個の働きが止められています。

 ・γ34.5 遺伝子
 ・ICP6 遺伝子
 ・α47遺伝子
 
テレビ番組ではあまり詳しい説明はありませんでしたが、参考サイト情報をもとに該当遺伝子の働きを止める事がどんな作用をもたらすのか分かり易く記載する。
  
  
(1) γ34.5 遺伝子の働きを止める
人間の細胞は、ウイルスに感染すると自身の細胞内でのタンパク質合成を停止して細胞として自滅する仕組みをもっています。云わば、自爆機構といえるでしょう。これは細胞内に入ったウイルスは細胞の中のタンパク質を利用して増殖しますからこれに対する防御システムです。
一方、ヘルペスウイルスには人間の細胞側のこの防御機能を阻止する機能をもっているのです。その働きをするのが、ウイルスが持つγ34.5 遺伝子です。そこで、遺伝子操作によって、ヘルペスウイルスのγ34.5 遺伝子を働かないように改変してしまいます。すると、次のような作用が期待できる。
 
◇人間の正常細胞
ウイルスの自爆阻止機能は働けないので、人間細胞の自爆機能が正常に働き、ヘルペスウイルスは増殖できません。要は餌が無い状態になります。
 
◆人間の癌細胞
癌細胞は元々、細胞の自滅機能が壊れた細胞です。だからこそ、体内で制御が効かず異常増殖してしまう。ですから、ヘルペスウイルス側のγ34.5 遺伝子の働きには無依存に、ウイルスは人間癌細胞の中で増殖していく。
 
 
(2) ICP6 遺伝子の働きを止める
ヘルペスウイルス側にある、ICP6 遺伝子はヘルペスウイルスのDNA 合成に必要な酵素を作る遺伝子です。ヘルペスウイルスも生物ですから、増殖するためにはDNA合成が必要です。この遺伝子の働きを止めると次の作用が期待できる。
 
◇人間の正常細胞
ヘルペスウイルスは人間細胞に感染してもICP6 遺伝子が働かないので、DNA 合成ができず、増殖することができません。
 
◆人間の癌細胞
人間の癌細胞にはICP6 遺伝子の代わりとなる酵素が豊富にあります。そのため、ヘルペスウイルスは自身のICP6 遺伝子が働かなくても、人間の癌細胞の中の酵素を使って増殖します。従って癌細胞ではウイルスが増殖する。
 
 
(3)α47遺伝子の働きを止める
人間の体にはウイルスに感染した細胞を、免疫細胞が見つけ出して食べてしまう機能があります。云わば感染してしまった細胞の掃除屋です。このとき免疫細胞は、ウイルスに感染した細胞が細胞表面に作る目印を頼りに攻撃します。
ヘルペスウイルスが持つα47 遺伝子には、この目印を減らす作用があります。ウイルスは、自身が感染した細胞が人間の免疫機構によって破壊されていくのを阻止して逃れようとするのです。従って、α47遺伝子の働きを止めると次の作用が期待できる。
 
◇人間の正常細胞
ヘルペスウイルスは、α47 遺伝子の働きを止められているため、感染した細胞が発する目印を減らす事が出来ない。そのため、次々に免疫細胞に攻撃されて食べられてしまうため、感染したウイルス自体も増殖することができない。
 
◆人間の癌細胞
癌細胞のほうも同様に、ウイルス感染した細胞の目印を減らす事が出来ない。従って、正常細胞と同様に免疫細胞に攻撃される。特に、癌細胞の場合は人間の抗がん免疫を担う免疫細胞が攻撃するのだが、目印が減らないので、癌細胞の減少効果が促進される。
 
 
 
以上が3つの遺伝子操作によって生まれる作用です。少々、ややこしいですが、実に巧妙なメカニズムが組み込まれています。(1)/(2)効果により、癌細胞でのみウイルスが増殖していくようになり、結果、癌細胞はヘルペスウイルスによって死滅してゆく。また(3)効果により、抗がん免疫機構が促進されるために、癌細胞は攻撃を受けて減少しやすくなるのです。

 
 
 

ウイルスでやっつける癌治療(1)

「毒をもって毒を制す」という言葉がありますが、ウイルスを使って癌細胞を破壊
すると云う夢のような話。NHK教育テレビ『サインエンスZERO』という番組で紹介されていました。東京大学医学部の東堂教授らが開発し、現在、臨床実験が開始された治療方法だそうです。
 
この治療ウイルスは「G47デルタ」と命名されており、第3世代と云われる最新
の癌治療ウイルス。既にアメリカで開発されて、臨床実験の最終段階に入っている「G207」というウイルスに改良を加えたものらしい。ウイルスでガンの治療を行う技術は外国で研究されており、アメリカやイギリスではまもなく製品化が行われるそうです。
 
そもそも、この研究は古くから始まっていた。癌に侵された子供が麻疹(はしか)に感染したところ、癌細胞が縮小したことから、ある種のウイルスが癌治療に使える可能性は見出されていた。
 
ウイルスは人間の細胞膜の中に入って増殖して、元の細胞を殺してしまう性質を持ちます。癌細胞も例外ではなく殺せるのです。しかし、ウイルスそのものの病変性が強すぎて危険なため応用が難しかった。つまり、癌組織にダメージを与えたとしても、同時に正常細胞もウイルスによって侵されてしまい、回復できないという問題です。
 
しかし、遺伝子操作技術が進み、この問題を解決する道が開けた。要は、正常な細胞には影響を与えず、癌細胞のみに選択的に感染するウイルスが出来れば最善な訳です。そんなに上手くゆくものなのか不思議ですが、ウイルスの遺伝子を操作することで、信じられないようなマジックを起こすことが可能らしい。
 
私は発症したことはないが、口唇ヘルペスという割とポピュラーな病気があります。唇の周囲に細かい水胞ができる感染性の病気ですが、このウイルスの遺伝子を操作して人間の正常な細胞では増殖せず、癌細胞だけで増殖してその細胞を殺すヘルペスウイルスを作り出すことが出来るという。
 
 
 
 

傷つく体と修復メカニズム(3)

前回からの続き
 
 
従来は、下図にあるように修復はKU70とKU80と呼ばれる二つのタンパク質が輪のようになって切断部位を見つけてくっつき、そこに他の修復タンパク質を呼び込み修復が行なわれると考えられていた。しかし、KUタンパク質が働く前に事前段階があることが発見された。
 
 

 
 
 
細胞の中のDNAはクロマチンと呼ばれるタンパク質とのかたまりになっていて、DNAの配列体を取り出す為には、クロマチンを動かす必要があります。今回、クロマチンを動かすACF1という組織修復因子であるタンパク質が、新しく開発した方法でヒト細胞内に作った二本鎖切断に直接にくっついて作用する事が判明したそうです。
 
さらに、KUタンパク質は二本鎖切断が出来ると、このACF1に結合します。ACF1がなければ二本鎖切断にくっつくことが出来ず、修復もできないことが分りました。また、ACF1以外にもクロマチンを動かす多数のタンパク質も存在し、修復に必要であることも分かったそうです。つまり、これらのクロマチンを動かす因子も二本鎖切断修復の必須タンパク質だった訳です。
 
想像ですが、修復というのはタンパク質という分子レベルの結合という化学反応ですから、その反応を容易にするために、適切なタンパク質が切断箇所に集まり事前にクロマチンに作用して環境を整えてるのかも知れません。恐らく、修復の主体機能はKU70/80と、これが集める修復部材にあるのでしょう。しかし、KU70/80をDNA配列につなぎ止める足場の役目をするのが、ACF1を始めとするタンパク質群なのではあるまいか?具体的な作用が何であるのか興味のあるところですが、そこまでは報告書の中にも記載されていなかった。
 
もうひとつ重要な医療への影響ですが、これらの修復因子タンパク質は癌細胞の中では欠けているケースが従来から見つかっているそうです。癌細胞も全てが修復機能を持っているわけではないらしい。ということは、そのような癌細胞は二本鎖切断を修復できないということです。つまり、放射線や抗がん剤で二本鎖切断をつくってやれば癌細胞は傷を修復できずに死んでしまうのです。
 
この研究成果から期待できるのは、修復因子を持たない癌細胞であれば、抗癌剤や放射線治療が有効であることが治療前に判定できるということ。もう一つは、修復因子を持つ癌細胞でも、癌組織の中の修復因子タンパク質の活動を局所的に抑制できれば、癌組織の殺傷効果を上げられる可能性があるという事でしょうか。内容的にはDNAの修復メカニズムの解明という基礎研究ですが、この分野の研究は医療への影響が非常に大きいものだと云う事が分かります。 
 
 
 
 
 
【参考・引用】
■日経電子版プレリリース
■分子生物学術誌「Molecular Cell」ホームページ 

傷つく体と修復メカニズム(2)

 前回からの続き
 
2010年12月23日付けの新聞やオンラインニュースに以下の記事が発表されました。
 
 《 癌治療における妨害たんぱく質発見、メカニズムも解明 》

 癌の放射線療法などでDNAの2本鎖を人為的に切って生じさせた「二重鎖切断」を修復してしまうため、治療の妨げとなっていたたんぱく質の働きを、東北大加齢医学研究所の安井明教授(分子生物学)らの研究グループが突き止めた。
修復メカニズムが解明されたことで、効果的な治療法の確立が期待される。二重鎖切断が生じた癌細胞は死滅する傾向があるため治療に利用されてきたが、「KUたんぱく質」と呼ばれる特定のたんぱく質が修復してしまうことが課題だった。研究グループがDNAの切断部に集まるたんぱく質を解析した結果、新たに「ACF1」、
「SNF2H」など4種類のたんぱく質を発見。
「KUたんぱく質」は、4種類のたんぱく質のうちどれか1種類と結合しなければ働かなくなるというメカニズムも解明した。
今後は、癌細胞に「ACF1」や「SNF2H」が存在するかどうかを調べれば、抗癌剤や放射線療法によって二重鎖切断を作り出す治療が効きやすいかどうかを、事前に特定できるようになるという。
 
 
地味な記事でしたが、分子生物学にとっては大きな出来事なのかも知れません。ただ、この記事は余りにもサマリ過ぎて、本来の研究目的や、従来の認識と新発見の事実がどう異なるのかが省略されていて理解できません。また記事からは、癌治療のための研究のように受け取れますが、実際のところが知りたくて少し調べてみました。
 
  
この研究では、多数の二重鎖切断を人の細胞のDNAに作りだし、そこに作用するタンパク質を可視化して解析するという世界でも初めての実験環境を作るところから始まったようです。これまでヒト細胞では、KUと呼ばれるタンパク質が二重鎖切断部位に直接作用して、切れた二重鎖DNAを再結合して修復を行うと考えられていました。
しかし、この新しい実験方法を使って、KUタンパク質が二重鎖切断部位に作用するには、DNAの周りのクロマチンを動かすクロマチン組織修復因子と呼ばれる多数のタンパク質群が関わっていた。まず、組織修復因子が二重鎖切断を見つけて集まり、そこにKUタンパク質が結合して修復を開始するのです。クロマチン(chromatin)とは、細胞内に存在するDNAとタンパク質の複合体のことを指します。従来から俗に染色体と呼ばれている部分だと思います。つまり、修復には従来認識のような単純ではなく、未知のタンパク質群が関与していた。
 
 
 
次回に続く

傷つく体と修復メカニズム(1)

がんの原因は、体内組織の中で、癌細胞が発生して増殖してしまうことから発症するのは知られています。では、癌細胞はどうして発生するのかというところが問題です。
動物の細胞内にはDNAが存在します。DNAは細胞の設計図のようなもので、細胞が増殖するときには、DNA情報を元に細胞分裂していくという。
しかし、このDNAというのは非常に繊細で、色々な刺激によって傷が付きやすい。
紫外線、活性酸素、科学物質などの影響により、DNAには簡単に傷が付いてしまいます。しかし、創造者はそんなことも予想していたのか、私達の体に壊れたDNAを修復する機能を持たせてくれました。壊れた部分を色々な修復部材(タンパク質)を使って元の正しいDNAに直してくれるのです。

ただし、その修復機能も万能ではなく、修復できる程度には限界があるようです。
人が怪我をした場合と同じなのかも知れません。
壊れ方がひどい場合には、修復出来ずに細胞自体が死んでしまいます。
また、細胞が死んでしまうだけなら良いのですが、まれに異常な修復が行われて、細胞自体が癌化してしまうという現象が起きる。これが、私達の体に発生する癌の原因と云う訳です。
 

 
  
DNAというのは模型を見た事がありますが、二本のタンパク質の鎖が絡み合ったような形状をしています。この二本の鎖が同じ個所で同時に切れてしまう現象を「二重鎖切断」と呼びます。この「二重鎖切断」はDNAが受ける最も深刻な傷で、この傷が正しく修復されないと高い頻度で細胞死に至るのです。細胞死に至らない場合は、特に癌細胞に変異する可能性が高い。
 
しかし、ものは考えようです。
正常細胞が「二重鎖切断」という傷により死んでしまうなら、癌細胞自体もこの傷で殺せるという効果が期待できます。現に、放射線や抗癌剤は癌細胞に直接作用して、DNAを破壊して殺そうという治療方法です。
でも、前述したように人間の体には壊れたDNAを修復する機能があります。この作用は正常細胞だけではなく、ある種の癌細胞にも働いてしまうらしい。もともと、癌細胞の出現は創造者の設計ではないのでしょう。あるいは設計ミスなのかも知れません。癌細胞を正常な細胞と区別が出来ないのです。
従って、せっかく癌細胞のDNAに傷を付けても、修復されて生き伸びる癌細胞が出てくる訳。ゾンビのように。
 
 
 
次回に続く
 
 

ヒ素を餌にする生物

米・カリフォルニア州にあるモノ湖で採取されたバクテリアが、リンの代わりに猛毒のヒ素をDNAやたんぱく質、細胞膜に取り込んで成長することが判明したというュースがNASAの宇宙生物研究部門から発表された。
この発見は生物に関する基本的概念を覆すもので、地球以外の場所における生命探し
にも大きな影響を与えることになるという。
 
私が子供の頃に読んだSF雑誌には、地球上の有機炭素化合物からなる生物とは根本
的に違う生物が、この宇宙には必ず存在すると書かれていた。今回の新発見生物は、従来の有機炭素生物には違いないのだが、基本構成元素に新たな物質が加わったという意味は大きい。この宇宙には、もっと驚くような元素で構成された生物、または、従来の元素ではない物質をエネルギー源とする生物の実在性を示していると思う。
 
 

           ヒ素を利用して繁殖した「GFAJ-1」(上)
           リンを利用して繁殖した「GFAJ-1」(下)
 
 

      モノ湖で高濃度のヒ素を含む堆積物を採取する研究者
 
 
 
以下、NASAの発表した記事の要旨を簡単に記載する。炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄という6つの元素は、地球上のすべての生物を構成する基本元素。そのなかで、リンはDNAやRNAなど核酸のらせん構造の骨格を成す物質の1つで、生命にとって必須物質と考えられている。また、細胞でエネルギーを運ぶ役割を果たすATP(アデノシン三リン酸)や細胞膜をつくるリン脂質の構成物質でもある。
 
ヒ素は化学的にリンに似ており、リン酸塩と同じようにふるまって代謝経路に混乱をきたすため、地球上のほとんどの生物にとって猛毒である。
発見された細菌「GFAJ-1」は、バクテリアの一種でγ(ガンマ)プロテオバクテリアと呼ばれるありふれた種に属する。
 
地球生物学者Felisa Wolfe-Simon氏らの研究チームは、実験によってリンを取り除き、ヒ素と置き換えてバクテリアが成長することを明らかにした。また分析から、ヒ素は新たな細胞を作り出すために利用されていることも判明。このような細菌が発見されたのは初めて。
NASAの宇宙生物学研究所の部長をつとめるCarl Pilcher氏は、SFの世界では、“生体を構成する元素の置き換え”というアイデアは従来もあったが、ヒ素を生命維持のために基本的な元素として利用する生物の存在は、理論上の推測に過ぎなかった。
そのような生物が実際にモノ湖に存在していたのは驚くべきこと。
 
また、NASAの科学ミッション局副長官Ed Weiler氏は、地球外生命探査をする上で、より広い視野に立って考える必要が出てきた。猛毒のヒ素で成長する生物の発見は、地球以外の惑星における生命存在の可能性を広げただけでなく、生物を構成するもっとも基本的な物質に関する理解を新たにする成果でもある。
 
 
 
 
あとがき
本発表対しては信憑性に欠けるという批判がその後に続出しています。
 
 
 
 
 
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