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東国の古代史

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2019-07-26 (Fri)  11:10

公地制度の崩壊(2/4) - 聖武天皇の嘘 -

前稿でも記した4つの山場を見て不思議に思うことがある。

①公地公民制------孝徳天皇の改新の詔(646年)
②班田収授法------持統天皇の飛鳥浄御原令、庚寅年籍(~690年)
③三世一身法------長屋王の太政官奏上(723年)
④墾田永年私財法--聖武天皇の詔(743年)


公地公民制の制定からみれば、約100年経過してるようにも見える。これは別格としても、実質的な運用を始めて、たった30年で崩壊の兆候である三世一身法が、そして50年でほぼ崩壊している。余りにも短い。制度自体に問題があったことは確かであろう。ただ、それだけでは無いような気がする。政策維持のための施策は三世一身法しか見当たらず、この法律も根本対策とは言えない。崩壊を助長するリスクの大きい対策です。朝廷は公地公民政策を撤回してもよいという考えがあったのかと疑わせます。


日本の公地制度は中国の『均田制』を真似している。中国版は北魏時代(西暦485年頃)の施行が初めてとされているが、755年の安禄山の乱(唐に仕えた安禄山の大規模反乱)で国政が混迷し、780年の両税法(唐の租税制度)の施行によって形骸化して実質廃止されたという。それでも中国の『均田制』は300年近くは存続している。

お手本の制度に問題はあっても、7世紀の出発時点で、中国の現行制度であった訳ですから、律令未経験の日本で根本的に見直すのは無理であったのかも知れない。原因は文化度の違いなのか、それとも7世紀中葉から末期では中央集権度という点で成熟しておらず、律令制度の導入は時期尚早だったのか?

原因はよくわからないが、公地制の崩壊を機会として豪族や有力農民の荘園制が発達していくのは事実です。一般農民は天皇に直接奉仕する建前であったが、間に豪族、貴族、寺社などの支配者層が古い時代のように入り込み、使役される構造に変わっていく。
律令以前と異なるのは中間搾取層からも法によって中央朝廷に税が吸い上げられる点であろうか。朝廷からみれば公地制度が崩れても、生産意欲の向上で田租が滞りなく入れば、経済的メリットは十分にあるだろう。しかし、地方の豪族、貴族、寺社が私有財産を増やすことは、相対的に朝廷の権力低下につながる。長い目でみれば朝廷にとってやはりデメリットになるはずです。
因みに奈良時代の土地の私有化は余りにも加熱気味であったため、墾田永年私財法は765年に停止されている。しかし一時的なもので、7年後には復活しています。



公地制度の崩壊5
東大寺が越中国に保有していた私有開田地図クリック拡大
759年越中国射水郡須加野(富山県高岡市の小矢部川付近)


墾田永年私財法の発布理由への疑念として、よく取り上げられる話ですが、前述の4つの山場のうちの、③三世一身法④墾田永年私財法の間隔に着目すると、たったの20年しか経っていない。此れは聖武天皇の詔の内容と照らすと不審な点として極まりない。
詔には「農民は、私有が終わる期限に近づくと耕作意欲を失い、荒廃田が増えるので、制限付きで永久私有を認めようと思う」と述べている。しかし、三代私有の期限は平均寿命の短かった当時でも、少なくとも60年はあるはず。三代ワンサイクルの1/3も経過していないうちに廃止されてる。既存灌漑設備を使う開墾でも一身30年以上は私有できたはずなので、詔の理由には明らかに虚偽に近い矛盾がある。
これが聖武天皇自身の作為なのか、続日本紀の編纂者(~797年)の作為なのか分かりませんが、公にできない理由が他にあったのではないかと疑問を抱かせます。

【補足】
当時の人間の平均寿命は45年くらいであろうか。口分田の支給は6歳から始まるので、これを考えると一身で35年、3世代では少なくとも60年以上は計上できる。通説では3代というのは本人を含ま云われている。従って、給者の年齢によっては最大で4世代の私有期間になるが、ここでは3世代分と計算している。


六国史も続日本紀の時代になると、日本書紀の時代よりも内容的に信頼できるケースが多いと思っている。しかし、全体的に事務的な記録は信頼できるが、何か理由を述べてる場合は、裏があることが多い。特に聖武天皇の時代は、特有の説得力の無い言い訳じみた詔が多い。それだけ無茶な国政を行っている証拠ともいえる。このケースもそれに相当するような気がします。推定ですが、当時、公地公民制度を放棄しても、土地の私有化を認めたい理由があったのではないか。次回から此の理由を考えたいと思います。



次回に続く


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