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東国の古代史

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2018-04-03 (Tue)  15:15

9世紀の関東大震災(1) - 原因は未知の活断層か? -

9世紀の関東は歴史書にも残る2回の震災にみまわれている。
この地震の記録は六国史のひとつ『日本後紀』巻27に記載されていたが、後世に失われています。しかし、同書の記事を抜粋した類書『類聚国史』が残っており、内容を知ることができます。それによると、どちらの地震も甚大な被害が出ており、犠牲者も多かったようです。

地震の概要は以下。

(1)弘仁地震
・発生年月日  西暦818年(弘仁 9 年 7 月)
・震央     北緯 36.0~37.0°、東経 139.0~140.0°
・被害地域   相模、武蔵、下総、常陸、上野、下野の広範囲
・地震規模   推定マグニチュード 7.5以上
・震度     震度 5~6以上
・震源     不明(活断層地震か否か判明していない)
・被害     上野、下野、武蔵、相模、下総、常陸を中心に圧死者多数
        地割れ、噴砂、山崩れ、岩屑なだれ、泥流箇所多数
        上野国の国府、国分寺・尼寺、山王廃寺、寺井廃寺損壊
        武蔵国の深谷岡廃寺、熊谷西別府廃寺損壊

(2)元慶地震
・発生年月日  西暦878年(元慶2 年9 月29日)
・震央     北緯 35.5°、東経  139.3°
・被害地域   相模・武蔵が中心
・地震規模   推定マグニチュード 7.4
・震度     震度 6以上
・震源     伊勢原断層の可能性あり
・被害     相模・武蔵を中心に家屋倒壊、道路損壊。圧死者多数
        相模国分寺、大山寺の堂舎損壊、仏像損壊

【補足】
9世紀においては全国レベルで見ると巨大地震が他にも起きてます。特に死者1000人
を出した貞観三陸地震などが有名ですが、本記事では関東地方に限定した内容で記載
しています。


9世紀の関東大震災1 
□:弘仁地震の震央推定範囲、○:元慶地震の震央位置


類聚国史』によると弘仁地震は、関東諸国の上野、下野、武蔵、模、下総、常陸で被害が大きかったという。この地震によると推定される地割れや噴砂が群馬県や埼玉県の遺跡調査で確認されている。特に群馬県では赤城山南麓の遺跡で、地割れ、噴砂、山崩れ、岩屑なだれ、泥流の痕跡が見つかっている。地震をもたらした活断層などの震源は特定されていない。前述したように震源の推定位置も緯度・経度とも1度の幅を持つ広範囲で絞られていない。関東内陸部を震源とする地震は関東平野北西縁断層帯など内陸部に複数ある活断層によるものが多いが、これら断層との関連性についても不明だという。


9世紀の関東大震災2 
群馬県桐生市新里町に露出する土石なだれ堆積物(黒ボク層の上側)


一方、元慶地震の被害は南関東の相模と武蔵がもっとも激しかったと記録されている。震源も伊勢原断層の可能性に絞られているが、この地域はプレート型の地震も多いため確定はしていない。従って北関東に位置する赤城山の南斜面に残る痕跡は878年の地震の影響の可能性は低いと言えそうです。もし878年の地震要因なら南関東にも北関東以上の規模の痕跡が見つかと思うが、現在までの発見例は聞かない。


9世紀の関東大震災3 
弘仁地震の北関東被害図(クリック拡大


上の図は弘仁地震の時の、群馬県と埼玉県の、地割れ、噴砂、建築物被害を纏めたものです。この図から想定されるのは、前述した関東平野北西縁断層帯と呼ばれる活断層群の活動です。特に埼玉県の深谷熊谷を中心とした被害が顕著です。この地域を走る大きな活断層としては深谷断層が有名です。
深谷断層は長さが60~80Kmにもおよぶ巨大なもので、その長さは地震の規模に比例すると言われる。しかし、活断層の場合、被害は断層面に沿って発生するので、比較的局所化する傾向がある。少し離れた赤城山麓の被害の大きさはちょっと不思議に感じます。


9世紀の関東大震災4 
関東平野北西縁断層帯(深谷断層、綾瀬川断層)クリック拡大


9世紀の関東大震災5 
関東平野北西縁断層帯(北部)クリック拡大
(空色:深谷断層 紺色:磯部高崎断層 黄色:平井神川断層)


上図のように関東平野北西縁断層帯は複数の活断層から構成されています。それぞれ、地域の名前が付けられています。何処かで群馬県は地震が少ない安全地域と記載しましたが、とんでもない。この地域の活断層は1万年に一回位の活動と考えられているので、今後30年間の発生確率は比較的低い。しかし地震の発生予測ほど当てにならないものはない。計算は、推定の活動間隔からの単純計算です(30年/(間隔-経過時間)。従って、プレート型地震とって活動間隔が長い活断層では高くなりようがない。早く蓄積歪の大きさを実測する方式を採用していかないと意味のない予測です。阪神淡路大震災内陸層地震だったが、直前の30年以内に地震が起こる確率を後から計算したところ、地域内で0.02〜8%だったそうです。しかし起きてしまう時は起きるるのが地震ではないでしょうか。


9世紀の関東大震災6 
関東平野北西縁断層帯の活動情報と発生予測クリック拡大


群馬県と埼玉県を跨ぐ深谷断層は変位量が大きく、動くときは3~5mのズレが発生する。この断層は逆断層で南西側が隆起します。深谷断層が走るJR高崎線沿いの微細地形を見ても長く連続した隆起は見つからない。しかし、部分的にはそれらしい痕跡はあります。直下に断層面がある深谷駅周から岡部駅北部の道の駅付近に続く隆起です。以下は国土地理院「色別標高図」の3D機能を使って作成した俯瞰画像です。高度は10倍に強調表示しています。


9世紀の関東大震災8 
↑中央が深谷駅。駅は崖下にありますクリック拡大


9世紀の関東大震災9 
↑岡部道の駅付近から深谷駅方面を見た俯瞰図クリック拡大


断層に沿って明瞭な隆起があり、活断層隆起の可能性はあると思います。行政の見解は利根川の河岸段丘ということになっていて、これに矛盾はありません。しかし、あまりにも断層線と一致してるので活断層による隆起を完全に否定することもできないと思う。

弘仁地震の北関東被害図」を見ると素人が見ても深谷断層の活動が疑われるのにどうして震源が特定されていないのか不思議に思い、J-STAGE等に公開されている地質調査報告書を読み漁ってみた。それによると、埼玉県において断層の活動調査は実際には行われており、どの研究者も「深谷断層の活動は8世紀以前であり9世紀の弘仁地震の際は活動していない」という見解で一致してるようです。但し、関東平野北西縁断層帯の全で調査されている訳ではないのと、まだ見つかっていない未知の活断が動ケースは十分考えられるようです。活断層の活動間隔は短いもので1000年、長いものでは2万年以上になる。活動しないと見つかりにくいので、未知のものは幾らでもありそうです


9世紀の関東大震災7 
深谷断層と並行する形で存在する大久保断層と太田断層クリック拡大


また政府系の公式地震予知機関では、弘仁地震の震源を深谷断層、または群馬赤城山麓にある大久保・太田断層と推定しているところもあります。要は統一見解としての地震原因は確定していないと見たほうが良さそうです。
高速鉄道や発電所を造る時に入念なボリング地質調査が行われます。しかし未知の活断層探索のためだけのーリング調査は予算的にも稀でしょう。まだまだ調査が不十分という感触があります。しかし、関東のどこかに仮に未知の活断層があったとします。でも、818年の地震の時に活動したか否かという点についてはなんとも言えない。なぜなら、震源が大きな活断層でも、赤城山の麓から相模・千葉・常陸方面まで被害を及ぼすかという疑問です。前述した地震の推定震央域は埼玉北部~栃
木県あたりと広大だが、推定範囲であって、震源が広いという事ではない。従って関東全域への被害という点で疑問符が付いてしまうのです。



次回に続く



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No title * by Toshiyan7
現代の大地震と9世紀の大地震発生場所が似てる見たいで
近い将来、大地震が起こる確率が高まっているようで
心配ですね

No title * by 形名
> Toshiyan7さん、こんばんは。
活断層は足元近くにあるし、大正時代の関東大震災みたいなプレート型のは、関東にいる限り逃げ場所が無いから怖いですよね。高崎南部は特に断層が多いようです。トシヤンさんの住まいは活断層から遠いだけでも、少し安心ですかね。

No title * by 形名
> ぬっきーさん、こんにちは。
元々ブログで公開してる記事ですから、利用して頂くのは問題ありません。ただ、個人としての投稿なので、より公共的な要素のある貴殿のようなサイトにおいては、以下のような点で気にかかることがあります。
①内容の信頼性に関するもの。個人で情報を集めて記載していますが、私の誤解や間違った推論が含まれている可能性があります。
②ネット情報や論文抜粋からの文書引用や画像の引用もありますが、情報の入手元に引用の了解を取っていないものが殆どです。個人の場合は自身の過失責任ですみますが、貴殿が運営されてるサイトの信用問題にならないでしょうか。

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現代の大地震と9世紀の大地震発生場所が似てる見たいで
近い将来、大地震が起こる確率が高まっているようで
心配ですね
2018-04-03-17:47 * Toshiyan7 [ 編集 * 投稿 ]

No title

> Toshiyan7さん、こんばんは。
活断層は足元近くにあるし、大正時代の関東大震災みたいなプレート型のは、関東にいる限り逃げ場所が無いから怖いですよね。高崎南部は特に断層が多いようです。トシヤンさんの住まいは活断層から遠いだけでも、少し安心ですかね。
2018-04-03-18:03 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]

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> ぬっきーさん、こんにちは。
元々ブログで公開してる記事ですから、利用して頂くのは問題ありません。ただ、個人としての投稿なので、より公共的な要素のある貴殿のようなサイトにおいては、以下のような点で気にかかることがあります。
①内容の信頼性に関するもの。個人で情報を集めて記載していますが、私の誤解や間違った推論が含まれている可能性があります。
②ネット情報や論文抜粋からの文書引用や画像の引用もありますが、情報の入手元に引用の了解を取っていないものが殆どです。個人の場合は自身の過失責任ですみますが、貴殿が運営されてるサイトの信用問題にならないでしょうか。
2018-06-14-05:47 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]