FC2ブログ

東国の古代史

Top Page › サイエンス › 9世紀の関東大震災(2) - 原因はプレート型地震か?-
2018-09-09 (Sun)  04:15

9世紀の関東大震災(2) - 原因はプレート型地震か?-

前回からの続き

西暦818年弘仁地震の原因に関する情報を調べてみても、日本の公式見解は特定不明な内陸部活断層の活動という評価が下されていた。しかし、単独の内陸部活断層がいくら規模の大きな断層でも、関東北部から神奈川、千葉までの全域に大被害を同時に起こすという考え方はどうしても無理があります。

仮に内陸性活断層でないとしたらどうだろうか?関東全域に渡る被害記録を読めば、むしろ内陸部の活断層よりもプレート境界型の地震を想定したほうが矛盾は少ないような気もする。ただ、小田原付近から千葉にかけての海域断層が震源だった1923年大正関東大震災(M7.9)でも、群馬県前橋市の揺れは震度4です。群馬県でも家屋の倒壊があったらしいが、この規模では赤城山の地割れや岩なだれの発生は想定し難い。家屋の倒壊は当時の耐震性の問題が大きく、現在ならば被害は殆どなかったと考えられる。

【補足】大正関東大震災の概要
1923年(大正12)9月1日11時58分、相模湾北部を震源とする海溝型の巨大地震が発生。関東大震災ではM7以上の地震が合計6回発生したことが判明している。

・1923年9月1日11時58分M7.9本震 神奈川県西部震源
・1923年9月1日12時01分M7.2余震 東京湾北部震源
・1923年9月1日12時03分M7.3余震 山梨県東部震源
・1923年9月1日12時48分M7.1余震 東京湾震源
・1923年9月2日11時46分M7.6余震 千葉県津浦沖震源
・1923年9月3日18時27分M7.1余震 九十九里沖震源

震源とされる断層は、神奈川県西部から小田原、鎌倉、横須賀、横浜、千葉県館山を含む長さ約130km、幅70km。プレートに沿った海岸線沿いの断層面は平均2.1mのずれを生じた。太平洋プレートの潜り込み面に沿っては大きな被害が出たが、ユーラシアプレートに乗る内陸部ではそれ程の被害は出ていない。

更に規模の大きかった2011年東日本大震災(M8.5)の時は、群馬県では震度5~5強の揺れがあった。しかし、住宅瓦が一部被害を受けた程度で、やはり山崩れ等は発生していない。

プレート境界型と仮定しても、従来の地震発生モデルでは818年弘仁地震の被害を説明しにくいのです。プレートテクトニクス理論は現在では矛盾した現象が多々あり、陳腐化していると評価されることもある。しかし、全く別のメカニズムが考えられるかというと、そんなものは幾ら調べても出てこない。

そこで、プレート型地震の発生メカニズムモデルについて調べてみた。すると比較的新しい学説らしいが、国立研究開発法人「産業技術総合研究所」というところでプレート型地震発生メカニズムモデル関東フラグメントという研究がありました。詳細を知りたい方は以下のリンクから行政法人のホームページ本文を読んでください。



記載されているのは、ほんの概要ですが、それでも長くて理解しにくい。ごくかいつまんで話せば、以下のような内容みたいです。

関東平野はユーラシアプレートに乗っているが、東から太平洋プレートが押し寄せ、南東からはフィリピン海プレートが突き上げている。
押し寄せる2つのプレートは日本海溝でユーラシアプレートの下に潜り込む。
従来説では、この3つのプレートの摩擦によってプレートに圧力歪が発生し、それが開放される時のエネルギーが地震として伝わったり、地表の断層が動いて地震が発生すると推定されている。
関東フラグメントの実体は太平洋プレートの残骸と推定されてる。200~300万年前に太平洋プレートに乗っていた巨大な海嶺(海底山脈)が日本海溝に潜りこもうとしたが、海嶺の抵抗でスムーズに潜りこめず、プレート自体が破断し、巨大な残骸が関東平野のユーラシアプレートと太平洋プレートの間に潜り込んでしまった。厚さ約25km、幅約100kmの独立した岩盤ブロックで、関東平野の直下約40km-100kmの深さに傾いた状態で存在する。関連すると推定される地震の震源も深い。

9世紀の関東大震災10 
↑関東フラグメントの位置・深さ・最近の関連地震

関東フラグメントは3つのプレートに接しており、各々の接点では巨大な摩擦が生じているため、プレート型起因の地震でありながら、この岩盤の上では地震が内陸部で発生することになる。

9世紀の関東大震災11 
↑新しいモデルの立体模式図


関東フラグメントとは、さながらゆっくり回転する複数のギアの間に挟まってしまった石ころのようなものでしょうか。周囲から激しく削られ圧迫されるが行き場がない異物です。従来説モデルよりも、フラグメントとプレートの接点が多いので、この岩盤の上は地震の巣になるそうです。また、このプレート断片は陸化した地域の直下にあるが、下部にプレート境界が存在するため、比較的規模の大きいプレート間地震(海溝型地震)が陸地の直下型地震として発生することになる。

この理論を読んで感じるのは、西暦818年弘仁地震の原因もこのタイプの地震ではないかという推定です。著者は特に平安時代の地震には触れていませんが、十分に考えられると思います。それは、このタイプの地震の特徴として、地震の絶対規模を示すマグニチュードが小さくても広範囲に揺れるという事実です。特に近年の地震規模は小さいが100年単位でみれば、この範囲ではないでしょう。
弘仁地震は推定M7.5ですから決して小さくはありませんが、2011年東日本大震災(M8.5)から比べればエネルギーは1/32に過ぎない。しかし、規模のより大きい海溝プレート型の1923年関東大震災よりも広範囲に被害を出している。まさにその点が着目すべき点だと思います。前稿で記載した弘仁地震の震源推定範囲はフラグメントの中にすっぽり当てはまります。

気象庁はHPで、弘仁地震の震源は1931年の西埼玉地震(M6.9)と同様に浅い活断層と推定しているが、たとえ直接原因は未知の活断層だとしても、引き金になったのは直下型のプレート型地震であった可能性もあるわけです。
そもそも、内陸活断層が動く動力源は何かというと、結局、太平洋プレートやフィリピン海プレートの圧力にほかならない。地震にはプレート型地震と内陸活断層地震の2タイプがあることは何処にでも記載があるが、両者の関係を明確化しているサイトは何処にもない。しかし、動力源が同じなら単独に切り離せるものなのか疑問です。新しいメカニズムモデルを前提に弘仁地震のような過去の被害に当てはめて検証する必要があると思います。過去に遡ることは未来を予測することにほかならない。




-後述-
ちなみに、関東フラグメント理論は遠田晋次氏という地震学者が中心となって研究されたものですが、日本では公式に認められていません。これは、遠田氏がこの理論を研究していた研究所が経済産業省の系列だからという理由があるそうです。日本の地震の公式管轄は文部科学省(気象庁)なので、縄張り争いをする仲ですから公式に認められないという訳です。
この研究は2001~2009年にかけて行われた。しかし、遠田氏も現在は東北大学の教授です。文科省の系列に移っているので、公には関東フラグメント理論の研究発表はできないようです。公式に認められない研究なので予算が付かないということなのだろうか。研究そのものは、遠田教授や前述研究所で続けられていると聞きますが、是非、つまらないメンツ争いで研究を遅らせないで欲しいです。単なる地震の原因解析に留まらず、将来の地震予知にもつながる研究だからです。

9世紀の関東大震災12 
東北大学 災害科学研究所 遠田晋次教授
(2018年現在)



【参考/引用情報】
・「関東平野北西部、高崎台地から井野川低地帯にかけての地下地質」
  研究論文 吉田英嗣、笠原友生
・「弘仁地震の被害と復興、そして教訓」
  埼玉県埋蔵文化財調査事業団主査 田中広明
・「関東地域の活断層の地域評価」、「群馬県の地震活動の特徴」
  地震調査研究推進本部 文部科学省研究開発局地震防災研究課
・「群馬県の過去の地震」
  群馬県庁ホームページ
・「群馬は地震が少ないは安全神話か?」
 「類聚国史に書かれた818年の地震被害と赤城山南斜面に残る9世紀の地変跡」
  群馬大学教育学部教授 早川由紀夫
・「首都圏直下に潜むプレートの断片と地震発生」
  独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層研究センター 遠田晋次

 他



にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト



No title * by kan*a_*4*
全国各地で大きな地震が続いていますね。
宮城(三陸)沖地震は30年周期と言われています、私は1978年と2011年の2回経験しました...3度目は無いと思いますけどね...。

No title * by 形名
> kan*a_*4*さん、こんにちは。
昔、過去に遡った三陸沖地震の本を読みましたが、想像以上に犠牲者がいるんですね。地震はその間隔が長くなると世代が入れ替わり、記憶はもちろん、記録まで風化しやすいです。東北では其れを防ぐために、アーカイブの保存に力を入れてますね。内陸部でも一つ一つの活断層の活動間隔は長いかも知れないが、無数にあれば、実質的なリスクは全く変わりません。むしろ世代に経験がなければ対応が後手に回る可能性も大きい。また、本記事のような内陸部に影響が大きいプレート型地震もあるわけで、日本に住んでる限り、地震に対して安全な場所など無いことは、少し勉強するだけでよく分かります。

No title * by ヒメ猫
草津白根山の湯釜の下に噴火予知の計測器見たいなものが埋めてあると聞いた事があります。でも、この1月に実際噴火したのは、すぐ隣の本白根の方でした!予知って難しいと本当に思います。でも、色々な情報はあったほうが良いと思いました思いました。

No title * by 形名
> ヒメ猫さん、こんばんは。
火山の場合は噴火前の微動があるらしいので、ある程度予知は可能なんでしょうね。たぶん本白根の場合はもう噴火の危険は少ないと設置してなかったのかな?でも地震の場合は難しそうですね。正確なレーザー測距離で特定の地域の歪は測っているようですが、あちこちには無いですから、やはり地震計かな。地震雲、井戸の水位、ナマズもありまずが・・・?

Comment-close▲

Comment







管理者にだけ表示を許可

No title

全国各地で大きな地震が続いていますね。
宮城(三陸)沖地震は30年周期と言われています、私は1978年と2011年の2回経験しました...3度目は無いと思いますけどね...。
2018-09-09-08:56 * kan*a_*4* [ 編集 * 投稿 ]

No title

> kan*a_*4*さん、こんにちは。
昔、過去に遡った三陸沖地震の本を読みましたが、想像以上に犠牲者がいるんですね。地震はその間隔が長くなると世代が入れ替わり、記憶はもちろん、記録まで風化しやすいです。東北では其れを防ぐために、アーカイブの保存に力を入れてますね。内陸部でも一つ一つの活断層の活動間隔は長いかも知れないが、無数にあれば、実質的なリスクは全く変わりません。むしろ世代に経験がなければ対応が後手に回る可能性も大きい。また、本記事のような内陸部に影響が大きいプレート型地震もあるわけで、日本に住んでる限り、地震に対して安全な場所など無いことは、少し勉強するだけでよく分かります。
2018-09-09-14:50 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]

No title

草津白根山の湯釜の下に噴火予知の計測器見たいなものが埋めてあると聞いた事があります。でも、この1月に実際噴火したのは、すぐ隣の本白根の方でした!予知って難しいと本当に思います。でも、色々な情報はあったほうが良いと思いました思いました。
2018-09-14-19:15 * ヒメ猫 [ 編集 * 投稿 ]

No title

> ヒメ猫さん、こんばんは。
火山の場合は噴火前の微動があるらしいので、ある程度予知は可能なんでしょうね。たぶん本白根の場合はもう噴火の危険は少ないと設置してなかったのかな?でも地震の場合は難しそうですね。正確なレーザー測距離で特定の地域の歪は測っているようですが、あちこちには無いですから、やはり地震計かな。地震雲、井戸の水位、ナマズもありまずが・・・?
2018-09-14-22:41 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]