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東国の古代史

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2019-05-16 (Thu)  01:22

『無肥料栽培』における窒素由来分析論を読んで

日本の流通野菜は窒素肥料が過剰であると指摘されたのは、はるか昔の昭和時代からです。その後、減肥が進んだのか否かはよく知りません。
現在、無肥料、無農薬の野菜にも色々なレベルがあるので一概には言えませんが、特定の組織生産者がつくる該当商品はプレミアム価格で取引されています。もちろん誰でも購入は可能ですが、それなりの出費を覚悟しなければならない。ならば、出費を抑えるために自分で家庭菜園で行ったらと考えるのは自然な流れです。しかし、無農薬は当然としても、無肥料で野菜が定常的に収穫できるのか?という点は専門家ではない我々には分かりにくい点です。

野菜栽培のジャンルには「自然栽培」というものがあります。この方法は大方は無肥料ですが、完全に無肥料を前提としているわけではない。私がテキストとしている本の執筆者も、野菜を作っていなかった痩せた土壌の場合は、有機自然肥料のクラツキ・マチクラツキや、くん炭・草木灰等の施肥を推奨しています。化成肥料や石灰は使いませんが、土壌育成の過渡期には施肥も必要と云う考えです。
しかし、世の中には、化学・有機肥料を使う一般的な慣行農法の末に完全な無肥料栽培に転じ、その農法を継続している人々もいます。農法の転換を行った理由は様々でしょうが、実在するのは確かなのです。



先日、J-STAGEという論文サイトで、野菜栽培に関する論文を流し読みしていたら面白いのを見つけました。無肥料栽培農家において、土壌や生産野菜の窒素成分の比率や由来を調べた調査結果です。

『無肥料栽培圃場で栽培したトマトの吸収した窒素δ15N分析による由来推定』
 小田正人・宝川靖和共著

【論文サイトリンク】
 
無肥料栽培1
小田正人氏
(国際農林水産試験センター研究員)


①調査対象生産者
埼玉県富士見市で、無肥料で野菜を生産してる関野農園です。この農園に関しては、私も聞いたことがあり、関野氏は業界では有名な人のようです。

無肥料栽培2
関野幸生氏

②生産野菜
生産野菜はナス科野菜全般、豆類、ネギ、里芋、人参等全般で生育は良好。

③栽培の特徴
連作、無農薬、自家採種であり、整枝・誘引等の技術レベルは非常に高い。防草シートなどで雑草は皆無の状態であり、野菜の残渣は圃場に残さず全て圃場外に廃棄する。

④肥料抜き方法
野菜の裏作で、エン麦栽培を4年間行い窒素を抜いている。なお、栽培したエン麦は圃場から持ち出し、窒素が循環しないように廃棄している。その後も継続して完全無肥料で栽培を行っている。

⑤野菜の品質と採算
野菜自体の繁茂量が少ないが、収穫指数が高い。生産野菜の約8割が秀品評価を受けており、無肥料、無農薬のためプレミアム価格で取引されており、十分に採算がとれている。スイートコーンに関しては生育不良である。

⑥調査方法
野菜や土壌に含まれる窒素の安定同位体存在比を質量分析装置で計測し、何処から供給されてる窒素なのか特定する。同時に比較サンプルとして従来慣行農法での土壌や野菜と使われた化成肥料の分析も合わせて実施している。
※窒素には質量数14と15の2種類があり、その比率を安定同位体自然存在比と呼ぶが、以降「δ15N」と記載する。野菜のδ15N値を調べることで、窒素がどこから供給されているのか判定できる。

⑦結果

-土壌のδ15N値
 無肥料圃場・・・・7.1‰ (パーミル)
 化学肥料圃場・・・8.9‰ (パーミル)

-トマトのδ15N値
 無肥料圃場・・・・3.2‰ (パーミル)
 化学肥料圃場・・・3.0‰ (パーミル)



論文はこの結果を受けて以下のように考察している。

■無肥料圃場において、もしトマトが土壌からのみ窒素を吸収しているなら、土壌とトマトのδ15N値は、ほぼ一致するはずである。しかし、トマトの結果は無肥料圃場でも、化学肥料圃場でも大きく下回る。化学肥料圃場の場合は、δ15N値の低い化学肥料によって希釈されたと推定することも可能である。しかし、無肥料圃場の場合は、土壌からの窒素以外の窒素(δ15N値の低い系外窒素)を一定の比率で吸収している事になる。
※トマト植物体のδ15N値低下は、窒素の総量が低いわけではない。土壌由来の窒素量が少ないという意味です。

■土壌以外の系外窒素の供給源としては、無肥料圃場で栽培してる大豆やササゲなどのマメ科植物が空気中から地中に固定している窒素由来が一定比率である事は確かである。しかし、それ以外の供給ルートも存在すると判断できる。

■無肥料圃場でも、深層に比べて表層のδ15N値が低いことから、土壌窒素は野菜によって吸収されていることは確実である。従って、窒素供給源が土壌だけであれば、いずれ供給は絶たれる事になる。しかし、実験とは別に、無肥料栽培では、始めてから4~5年で収量の下降は底を打ち、その後は回復していき、慣行農法と同じレベルまで回復することが経験として実証されている。従って、土壌以外の系外窒素の供給は明らかであり、そのシステムの解明は今後の研究課題となる。

※論文なので数値・数式が非常に多く、短い記事では表現しにくいので、結果の考察は文章で表現しました。意味が分からない場合は実際の論文へのリンクから参照してください。



【感想】
論文では、マメ科植物の栽培頻度、経歴が定量的に表現されていないが、土壌以外の系外窒素の供給源は、マメ科野菜が空気中から固定する窒素、および、土中バクテリアが空気から固定する窒素があるのではないかと推定します。土壌のような複雑な生物環境では窒素量低下に反応する何らかの緩衝作用が働くのかも知れません。論文では自動車排気ガスからの窒素酸化物についても触れているが、この影響は少ないという気がします。
窒素の供給源が空気中の窒素であることは、論文を読んでる最中に想像はできました。しかし、興味を引いたのは、この系外窒素供給システムが、完全に無肥料で、植物体窒素循環をも絶たないと加速・発展しないのかという点です。もし、そうならば、一般の趣味レベルの野菜栽培では、無肥料は可能でも、圃場から植物体を完全除去するのは難しい。それとも、無肥料に移行さえすれば、系外から窒素供給が一定の比率で実現するならば、非常に面白いと思います。肥料という、野菜栽培ではコストのかなりの比率を占める部分をカット出来る可能性があるのですから。今後は一般的な有機慣行農法においても、植物体の窒素由来を分析し、肥料の必要性に対する評価を行って欲しいと思います。

また、その他にも此の研究に価値があると感じる理由があります。
私が生まれた昭和中期(高度経済成長期)は化成肥料が急激に普及した時代でした。夢の農業資材として化成肥料を使用しない農業などあり得なかった。その後、この農法にもいろいろ弊害があることが分かってきた。ひとつは、高濃度の硝酸態窒素を含む地下水の汚染問題だといいます。アンモニア型の窒素は土中でも安定して存在できるが、硝酸態は水に溶けやすいので、施肥しても大半は地下水に流失してしまうそうです。化成肥料の窒素成分として含まれているのは硝酸態窒素が殆どです。日本の上水道の水処理では此の窒素成分を除去できないという。自然には、これを分解する能力はあるが、供給される量が多いと間に合わない。また近年、大量の家畜糞を使用した堆肥なども汚染に一役かっているようです。もともと落葉や雑草も腐食過程で硝酸態窒素を放出するが、その濃度は高くありません。いわゆる化学的な肥料成分だけで云うなら腐葉土は肥料にならないと言える。しかし家畜糞はものすごく濃度が高いようです。最近は飲用の井戸を掘る人は少ない。しかし、既にかなりの井戸水が水質検査で硝酸態窒素過剰で飲用に適さいないという判定が下されています。おそらく、地下水はいずれ海に出て海洋汚染にも繋がっているでしょう。
では、硝酸態窒素が増えると何故問題なのかというのが重要ですが、私も論文等は読んだことがありますが、医療科学知識がないので詳しく説明できません。ただ過去に高濃度の硝酸態窒素によって幼児が健康を害したり、亡くなったという事例があります。大人には耐性があるようですが、全く問題が無い訳ではなく健康を害している可能性が高いとする研究者もいます。また、野菜の味や保存性などにも影響しているようです。一例として、タマネギの保存が利かないのは窒素成分が過剰なために腐敗しやすいと云われています。従って、もし完全無肥料で成立する農業があるとすれば、野菜は自身に必要な分だけを何れかシステムで確保し、過剰な投与を必要としなくなる訳です。これは、コスト面だけでなく、自然環境的にも偏ることなく、人間の安全な生活に寄与する可能性が高いということです。



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No title * by ojyaru2
無農薬野菜と言うとお高いって感じを持ってますが
結構家庭菜園で作った物を頂戴する機会が有りますが稀に無視焚いたりしますが若い人に差し上げるとその虫で嫌われるそうなので若い方には上げないって言ってましたね。

ご近所の稲作農家の方が無農薬で育ててるので結構採算が合うんだという話ですが水田を見ると雑草だらけでこれを見るといくら無農薬と言われても購入する気は無いですし書く水田を回り廻ってくる水を使ってるんですから無農薬と言っても完全では無いんでしょうね。

>圃場から植物体を完全除去するのは難しい。

確かにこの植物体を除去するには少しの量なら良いでしょうが農家さんは結構多いですもんね。


No title * by CLM
自分で糠で糸状菌培養系肥料をつくっています。
雑草が元気になりました。

「雷で豊作」にという話もありますね。

Re: No title * by 形名
おじゃさん、こんにちは。
無農薬や化学肥料を使わない野菜はネット通販などで最近盛んですが、割高なのは否めないですね。
農薬は嫌ですが、化学肥料が本当に体に良くないのかも、はっきりとは証明されてはいないようですが、
自然に存在しないものは、使わないほうが安心という意識もあるんでしょう。
一時期、過剰な硝酸性窒素を含む野菜が体を蝕むという学説は確かにありました。収量増加のための過剰
な施肥は良くないんでしょうね。
畑の地下にも地下水は流れているわけで、周囲に除草剤や、農薬を使ってる土地があれば、それも
安心できないですね。完全に閉鎖系の栽培など、都市部では難しいでしょう。

Re: No title * by 形名
clmさん、こんにちは。

糸状菌というのは山の腐葉土の上の方にある白い菌糸のようなものですかね。
最近書いた米ぬかボカシの記事の中でも、ちょっと触れたのですが、米ぬかに
腐葉土の菌糸を発酵材として入れる人もいるようですね。
私も4月に作った米ぬかボカシを今使ってますが、効果はまだわかりませんね。
でも発行させてあるぶん、植物には吸収されやすいと思ってます。
「雷で豊作」というのも窒素酸化物にからむ話と思いますが、今は、排ガスから
Noxが沢山補給されるので、もし本当なら、空気中窒素の土中還元要素かも。
でも排ガスでは不安もありますね。


No title * by CLM
糸状菌というのは「カビもキノコも糸状菌」で
たくさんあるのです。
腐葉土に菌糸を張っているのはきっと糸状菌の一種と思います。

同じ苗を化学肥料で育てた友人と有機肥料で育てているうちで
味が違いますよ。


Re: No title * by 形名
clmさん、こんにちは。

一般に有機堆肥材と呼ばれる、落ち葉やワラなども発酵分解させないで使うと土壌中の窒素をかなり消費するようで、窒素不足になる場合もあると聞きます。色んな菌種によって予め分解してから使いたいですね。私が野菜を始めて5年目くらいですが、初年度は化成肥料を使いました。畑の中でも痩せ地と肥料過多の部分があるのがわかったので、今は無肥料、または、雑草+落ち葉堆肥+米ぬか+くん炭、草木灰のみでやってます。食べ比べた事はないですが、きゅうり等はスーパーのものより旨いです。

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No title

無農薬野菜と言うとお高いって感じを持ってますが
結構家庭菜園で作った物を頂戴する機会が有りますが稀に無視焚いたりしますが若い人に差し上げるとその虫で嫌われるそうなので若い方には上げないって言ってましたね。

ご近所の稲作農家の方が無農薬で育ててるので結構採算が合うんだという話ですが水田を見ると雑草だらけでこれを見るといくら無農薬と言われても購入する気は無いですし書く水田を回り廻ってくる水を使ってるんですから無農薬と言っても完全では無いんでしょうね。

>圃場から植物体を完全除去するのは難しい。

確かにこの植物体を除去するには少しの量なら良いでしょうが農家さんは結構多いですもんね。

2019-05-16-08:52 * ojyaru2 [ 編集 * 投稿 ]

No title

自分で糠で糸状菌培養系肥料をつくっています。
雑草が元気になりました。

「雷で豊作」にという話もありますね。
2019-05-16-10:38 * CLM [ 編集 * 投稿 ]

形名 Re: No title

おじゃさん、こんにちは。
無農薬や化学肥料を使わない野菜はネット通販などで最近盛んですが、割高なのは否めないですね。
農薬は嫌ですが、化学肥料が本当に体に良くないのかも、はっきりとは証明されてはいないようですが、
自然に存在しないものは、使わないほうが安心という意識もあるんでしょう。
一時期、過剰な硝酸性窒素を含む野菜が体を蝕むという学説は確かにありました。収量増加のための過剰
な施肥は良くないんでしょうね。
畑の地下にも地下水は流れているわけで、周囲に除草剤や、農薬を使ってる土地があれば、それも
安心できないですね。完全に閉鎖系の栽培など、都市部では難しいでしょう。
2019-05-16-14:30 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]

形名 Re: No title

clmさん、こんにちは。

糸状菌というのは山の腐葉土の上の方にある白い菌糸のようなものですかね。
最近書いた米ぬかボカシの記事の中でも、ちょっと触れたのですが、米ぬかに
腐葉土の菌糸を発酵材として入れる人もいるようですね。
私も4月に作った米ぬかボカシを今使ってますが、効果はまだわかりませんね。
でも発行させてあるぶん、植物には吸収されやすいと思ってます。
「雷で豊作」というのも窒素酸化物にからむ話と思いますが、今は、排ガスから
Noxが沢山補給されるので、もし本当なら、空気中窒素の土中還元要素かも。
でも排ガスでは不安もありますね。

2019-05-16-14:44 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]

No title

糸状菌というのは「カビもキノコも糸状菌」で
たくさんあるのです。
腐葉土に菌糸を張っているのはきっと糸状菌の一種と思います。

同じ苗を化学肥料で育てた友人と有機肥料で育てているうちで
味が違いますよ。

2019-05-17-04:29 * CLM [ 編集 * 投稿 ]

形名 Re: No title

clmさん、こんにちは。

一般に有機堆肥材と呼ばれる、落ち葉やワラなども発酵分解させないで使うと土壌中の窒素をかなり消費するようで、窒素不足になる場合もあると聞きます。色んな菌種によって予め分解してから使いたいですね。私が野菜を始めて5年目くらいですが、初年度は化成肥料を使いました。畑の中でも痩せ地と肥料過多の部分があるのがわかったので、今は無肥料、または、雑草+落ち葉堆肥+米ぬか+くん炭、草木灰のみでやってます。食べ比べた事はないですが、きゅうり等はスーパーのものより旨いです。
2019-05-17-09:39 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]