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東国の古代史

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2021-04-05 (Mon)  06:00

考古遺物の年代測定(1/3)「年輪年代法」

古墳などの遺跡の築造年代や、遺跡から出土する遺物の製作年代を測定する方法は幾つかあります。他稿で土器の編年分析については記載していますが、編年は時代の順序を明確化する手段であって、実年代が分かる訳ではありません。本稿では実年代の代表的な測定方法について触れています。ただ、私自身が詳細に把握している訳ではないので、平易に記述したつもりですが、分かりにくい説明になっている部分もあると思います。また、使っている単語も自分の理解で表記してるので正しいかどうか分かりません。



測定対象が、木造物で樹皮を含む100年分以上の年輪試料が得られる場合は、年輪年代法での測定が可能な場合があります。原理は、木材の1年毎の年輪の間隔を精密に計測し、その変動パターンを数値グラフ化します。それと、作成済みの該当木材の標準変動パターン(標準スケール)と照合して、パターンの一致する箇所を見つけるという手順です。

考古遺物の年代測定8
↑木材の年輪読取装置

年輪の標準変動パターンは、スギやヒノキが代表的です。各時代の該当木材の年輪をつなぎ合わせて、数千年分のスケールが作られている。また、異なる樹種間でも応用が可能だと言われている。年輪は気候に影響されるので、樹種が異なっても、年輪の変動パターンは類似します。樹木間の固有変動を平均化する技術で、樹木差の影響を排除した共通の標準年輪スケールも作られています。

考古遺物の年代測定1
↑産地が異なっても同期するヒノキの年輪変動パターン

考古遺物の年代測定4
↑標準変動パターン(黒)と出土した柱根の変動パターン(赤)

この方法の凄いところは、試料の条件が良好であれば、理論的には誤差ゼロで測定できる点です。ただし、木が伐採されたか、枯死した時代が判明するのであって、木材で造られた遺物の製造年代が分かる訳ではありません。それでも、伐採年が判明するだけでも有力な情報となりうる。例えば、木製の仏像であれば、材木の乾燥・保管期間を加算することで製造年を推定できます。また、木像の様式鑑定と併用することで測定の検証も可能でしょう。

考古遺物の年代測定2
↑平安時代初期の行基菩薩坐像の年輪照合(伐採年は西暦997年)
(黒線:ヒノキ標準変動パターン、赤線:木像の年輪変動パターン)

年輪年代法の実際手順を分かりやすく解説している書籍は少ない。一番気になるのは照合操作ですが、方法は2種類あるようです。一つは、試料の年輪変動パターンをグラフ化して、標準スケールと人間の眼で照合していくスタイル。変動変化が比較しやすいように、トレーシングペーパーの対数化グラフにプロットして行います。もう一つは、試料の変動パターンを特殊な数値化処理を行なって、それをコンピュータで統計的に処理する方法です。移動平均法と呼ばれる方法で数値化し、標準スケールとの相関係数を計算しながら照合していきます。試料の個体差で目視での照合が難しいケースに適用されている。しかし、照合一致するとは限らず、相関係数が一定基準に達しない場合は測定不可で終わるケースもあります。

年輪年代法は、試料の条件制約が厳しいうえに、樹皮を含む100年分以上の年輪が必要な事から、木材が出土しても適用できるケースは少ない。また実際に測定しても、年輪パターンの照合一致に至らないケースも多いという。どんな条件でも応用できる万能な測定法とは言えないようです。また、理論的な測定精度は高いのですが、弥生時代にいたる遺物測定においては、従来の推定値よりも大幅に遡る結果が得られている。有名な事例は、大阪池上曽根遺跡奈良唐子・鍵遺跡です。大型建築物の柱を年輪年代法で測定したケースでは、予想を100年以上も遡る紀元前1世紀の結果が出ました。つまり近畿圏の遺跡の時代判定は大幅に見直される事になりました。この結果を疑問視する研究者もいるわけです。

年輪年代法のヒノキやスギの標準変動パターンは過去の多くの古木材を分析し、つなぎ合わせて作成するが、つなぎ合わせの精度が直接分析精度に影響する。しかし、各時代に連続した都合のよいサンプルが多量にあるとは限らない。特定の時期だけはサンプルが少なく、標準変動パターンの信頼性が落ちる期間があるのは確かです。また、この解析方法を導入した光谷拓実さん自身が標準データを公開していないらしい。そのため、奈良文化財研究所の人間しか検証できていないと疑問を投げかける研究者や歴史学者もいるそうです。確かに標準スケールの製作は密室で行われるにしても、後述する他の測定方法のように公開されるべきものかも知れません。このような経緯から、年輪年代法はオープンな環境で、誰もが平等な条件で測定できる方法とは言えないものとなっている。そこには、学派・組織的な閉鎖性があるようにも思えます。後述する他の測定法の精度が今後改善されていくと、この測定法は使用される頻度が落ちていく可能性があります。


次稿に続く


【参考引用】
■日本美術6「年輪年代法と文化財」 東京国立博物館、奈良国立博物館、京都国立博物館

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ウィグル・マッチング法 * by 至柔
初めてコメントさせていただきます。

ウィグル・マッチング法という方法があるということを初めて知りました。

木材の年輪を10年ごとに区切って、10年ごとに放射性炭素14の含有量を測定する。そして、その10年ごとの炭素14の変化を、標準炭素14変化パターンに当てはめて、年代を割り出すということなんですね。勉強になりました。

Re: ウィグル・マッチング法 * by 形名
至柔 さん、こんにちは。

ウィグル・マッチング法は放射性炭素年代測定法の誤差を改善するために
開発された手法みたいですよ。
基礎的な統計学を勉強すれば、もっと深く理解できるのですが、
なかなか勉強嫌いでして追いつけませんね。笑

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ウィグル・マッチング法

初めてコメントさせていただきます。

ウィグル・マッチング法という方法があるということを初めて知りました。

木材の年輪を10年ごとに区切って、10年ごとに放射性炭素14の含有量を測定する。そして、その10年ごとの炭素14の変化を、標準炭素14変化パターンに当てはめて、年代を割り出すということなんですね。勉強になりました。
2021-04-08-15:03 * 至柔 [ 編集 * 投稿 ]

形名 Re: ウィグル・マッチング法

至柔 さん、こんにちは。

ウィグル・マッチング法は放射性炭素年代測定法の誤差を改善するために
開発された手法みたいですよ。
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なかなか勉強嫌いでして追いつけませんね。笑
2021-04-08-16:51 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]