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東国の古代史

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2021-04-05 (Mon)  06:15

考古遺物の年代測定(2/3)「"放射性炭素14"年代測定法」

前稿からの続き

"放射性炭素14"年代測定法炭化物や枯死した木材の中の放射性同位元素の含有量を測って年代を測定する方法です。自然界には常に一定量の質量数14の放射性炭素が存在しています。この炭素は非常にゆっくりと崩壊する性質を持っています。一方、生きている樹木の中には空気中と同じ比率で一定量の炭素14が含まれます。樹木が枯死すると以降は代謝がなくなるので、樹木中の炭素14は崩壊が進んだ分だけ量が減ります。この量を測定する事により、枯死した年代を測定します。

考古遺物の年代測定5
↑炭素14減少率と経過時間の関係
      ※横軸はT=木材枯死後の経過年
      ※縦軸のN=試料中の炭素14含有率、N0=木材生育時の大気中炭素14含有率
  
試料中の炭素14が元の状態から何%減少しているのか分かれば、木材が枯死してからの経過時間が得られるという原理です。しかし、この測定法は誤差が大きいので、必ず測定値の較正が必要です。というのは、大気中の炭素14量は一定ではなく、時代によって宇宙線の影響や、海洋に蓄積された古い炭素との循環で変動しているためです。この変動データは既に標準データ(較正曲線)として公開されており、これを使用して較正をかけます。

言葉では説明しづらいので、実際の測定事例を以下に示します。以下の図は、ある古文書の和紙2点(試料1/試料2)の炭素14年代測定値の較正結果を示している。

考古遺物の年代測定3
↑大気中の炭素14濃度較正曲線による測定値の較正例
          ※較正曲線=StuiverandPearson1993
          縦軸:放射性炭素年代[西暦1950年をゼロ起点とした前年代(calBP)]
          横軸:暦年代[西暦紀元を基準とする年代(calAD)]

↑縦軸が試料の炭素14年代測定値で横軸は較正された暦年代です。図中の破線は、大気中炭素14濃度に時代変動がないと仮定した場合の炭素14年代と暦年代の関係です。これに対して実際の暦年代と炭素14年代の間には較正曲線で示した関係がある。大まかに見ると、この時代は西暦1400年以前の試料は実際の暦年代よりも古い炭素14年代が検出され、西暦1400年以降の試料は、逆に新しい炭素14年代が検出される傾向があるようです。
試料1と試料2の各々3本の測定値横線のうち、中央の線が炭素14年代の平均値を示し、上下のものが誤差範囲を示す。横線と較正曲線との交点から横軸に垂線を下ろすことで暦年代が得られます。
■試料1=炭素14年代 845±51⇨較正後の暦年代⇨ 1166年(1220年)1262年【calAD】
■試料2=炭素14年代582± 47⇨較正後の暦年代⇨1310年()1353年、1385(1400年)1413年【calAD】
試料2に関しては較正曲線の凹凸により、推定暦年代が2箇所に分散する。このように較正曲線が短い期間で凹凸を繰り返す期間では、暦年代を狭い範囲に絞り込めない問題が発生する。

この測定法は、木材だけでなく、煮沸用土器に付着して焼付いた穀類や、吹こぼれて焼き付いた炭化物の年代測定にも使用できます。ほんの僅かな試料でも測定が可能なのが、この方法のメリットです。分析計に用いる試料は純粋なグラファイト(炭素)に換算して、0.2~2mgあれば可能です。土器形態からの実年代変換はこの方法で測定されている。
測定精度に関しては、較正をかけても誤差は比較的大きい。一般的に、数千年前までの比較的新しい試料については、±20~±35 年程度です。試料の年代が古くなると誤差はこれより大きくなる。これは、時間の経過で放射性炭素14の崩壊スピードが遅くなるので、測定誤差が増大するという原理的な問題です。特に、試料の前処理が悪い場合は、±100年の誤差が出ることもあるそうです。

なお、年輪年代法は年輪の幅を計測するので、試料を輪切りにすることを除けば、非破壊検査です。しかし、放射性炭素を使う測定では、試料の前処理工程があります。①試料のクリーニング、②試料の切り出し、③不純物の薬剤処理、④二酸化炭素の抽出、⑤二酸化炭素のグラファイト化を経て、やっと加速器質量分析計(AMS)で測定可能となります。

考古遺物の年代測定6
↑群馬県桐生市の㈱パレオ・ラボ所有の加速器質量分析計(AMS)

"放射性炭素14"年代測定は、測る試料の量に自由度があるので、もっとも測定実績が多い方法です。ただ測定には加速器質量分析計(AMS)が必要です。装置は高価であり、維持コストも大きい。一部の研究機関や民間調査会社で保有するが、その数は多いとは言えないようです。測定に掛かるコストも高額が予想されるので、測定されないまま保存されている考古遺物も多いと思います。


次稿に続く

【参考引用】
■加速器質量分析計による古文書の放射性炭素年代測定 名古屋大学年代測定資料研究センター


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