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東国の古代史

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2022-08-23 (Tue)  15:00

島状遺構を持つ古墳に関する考察(3/4)「飯玉神社古墳」

前稿からの続き

(2)飯玉神社古墳(前橋市広瀬町2-28-281)
   総覧:上川淵村97号古墳
飯玉神社古墳は前橋市の広瀬団地内にある前方後円墳です。現状は神社が乗る後円部のみ残存し、前方部は削平されている。前方部は参道になっているので、時期は不明ですが神社の創建と同時に削平された可能性が高いでしょう。何故か本墳はほぼ確実に大型古墳であったはずなのに群馬県古墳総覧2017には掲載されていません。1935年調査の上毛古墳総覧に上川淵村97号古墳として記録されているのみです。

飯玉神社古墳2022
↑2022年現在の飯玉神社古墳(前方部は削平済で参道になっている)

飯玉神社古墳痕跡1894-1915地図
↑明治27年の地図には周濠の痕跡が周辺道路に残る

飯玉神社古墳昭和10年スケッチ前方部なし
↑1935年(昭和10年)の上毛古墳総覧のスケッチ

上毛古墳総覧のスケッチは正確であることが知られているが、後円部のみしか描かれていない。これは円墳として認識されていて、昭和10年時点で前方部は既に削平されていた事を示す。

飯玉神社古墳1950
↑1950年の画像に前方部の形が見えるが既に墳丘は削平されている

「古墳周濠内に計4基の円墳状中島が存在する」という情報を某知見者からいただいているが、現時点の現地踏査では一基しか確認できない。この一基が単独で存在するのか、元は対称形で存在したのかは不明です。航空写真では1947年頃まで遡れるが他の円墳は確認できない。

飯玉神社古墳14
↑飯玉神社古墳の前方部に相当する境内

上の画像は主墳の西側くびれ部から前方部端方向を撮影している。左側が削平された前方部主軸線の参道です。残存する円墳は右手に見える神楽殿の裏手にある。神社の境内は狭いが、これは周濠部全体が殆ど広瀬団地の敷地となっており、境内はほぼ墳丘本体の範囲だけに収まっているためです。そのため、境内を囲むフェンスが元の墳丘の形になっているのが面白い。

飯玉神社古墳2
↑主墳の前方部西側に残存する円墳の一基で、参道から入ると左手に見える

円墳の高さは左に駐車しているホンダN-BOXの高さと比較するとイメージ出来ると思います。おそらく高さは、円墳の見かけの基壇面から2.5~2.7m程だと思います。

飯玉神社古墳6
↑円墳の頂上に散在する摂社の祠

残存する円墳の上には幾つかの摂社または末社が祀られている。円墳墳丘の向かって左側は一部削られている。円墳は元々は前方部墳丘の至近距離にあったものと思われます。この墳丘が祭祀のための島状遺構なのか、単なる陪塚なのか判断が必要です。現地見学の結果からは、以下の観点から島状遺構である可能性は低いと考えています。

1950年の航空写真で見ると、画像の前方部端には細い生活道路が確認できる。これは、前方部の墳丘端がこの生活道路までで終わっていることを示している。この状況から元の墳形を推定すると以下の図となる。その場合、○印で示した中島は余りにも前方部端に近く、祭祀を目的とした中島の可能性は低いのではないか。また、保渡田古墳群の4つの島状遺構の位置関係を群馬県または該当氏族の定形墓制と考えた場合、飯玉神社古墳の中島は例え対称配置されていたとしても定形から外れている。

飯玉神社古墳痕跡1
↑1950年時点の周辺道路と残存部・削平部

現地踏査で確認したところでは、円墳の現状は本墳の主軸に沿った楕円形で、現状で長径は約20m、短径は10mある。本来は直径20m以上の円墳だっと推定できます。主墳の主軸長は90~94mと推定出来るので、20m径の円墳サイズは島状遺構にしては大き過ぎる。因みに、保渡田八幡塚古墳の場合は墳丘長は約100mであるが、島状遺構の直径は15mしかない。面積にすると飯玉神社の円墳は約2倍の大きさになる。井手二子山古墳の場合は墳丘長108mであるが、島状遺構径は18mにすぎない。

飯玉神社古墳3D
↑飯玉神社古墳の3D標高図(現状)

島状遺構の場合、墳丘の高さは本墳に比べて非常に低い。しかし、飯玉神社古墳の場合は風化による摩滅過程を考えれば、尚更、墳丘が高過ぎる。本来は3m以上の高さがあったと思います。参考に整備以前の保渡田八幡塚古墳発掘時の井出二子山古墳の航空写真を示します。島状遺構の痕跡は保渡田八幡塚古墳のくびれ部2箇所のみ確認できるが、地上部の盛り上がりは殆どない。井出二子山古墳もほぼ同様ですこれは墳丘周囲が稲作で耕作されて表面は削平されているからです。島状遺構の墳丘が元々高いものであれば、稲作を行っても墳丘は遺跡として残った可能性がある。言い換えると島状遺構という祭祀の場は、元来、高さが低かったので自然消滅しやすかったと考えられる。

保渡田八幡塚古墳昭和55年島状遺構痕跡画像
↑1980年(昭和55年)の保渡田八幡塚古墳

井手二子山古墳発掘時の航空写真平成15年
↑2003年の井手二子山古墳発掘調査時の航空写真

井手二子山古墳の場合は墳丘くびれ部の北側島状遺構は地上部に痕跡が認められる。南側は残っていないように見える。後円部端の2個の島状遺構は全く見えません。

井手二子山古墳3D
↑復元された井手二子山古墳の島状遺構位置(後円部を囲む配置)

本古墳は発掘調査されていないため、築造時期が不明であるが、隣接する前橋天神山古墳の至近距離に存在する。飯玉神社古墳も、おそらく4世紀代から遅くとも5世紀初頭の築造と推定します。だとすれば、保渡田古墳群(初代築造は450~475年位)よりも明らかに先行しており、島状遺構を伴う可能性は低い。



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No Subject * by ご〜ご〜ひでりん
形名さま、こんばんは。

以前にコメントでも書きましたが、私も飯玉神社には一度見学に行きました。
 境内の小円墳らしき高まりが島状遺構ではないかという想定はまったくしませんでしたが、あらためて形名さんの考察には説得力があります。。。
最近は私はもっぱら栃木県内の古墳をゆっくりとみて回っていますが、栃木には島状遺構を伴う古墳は存在しないようです。
地域によって様々な古墳の形態が存在することは、本当興味深いです。

Re: No Subject * by 形名
ご〜ご〜ひでりんさん、コメントありがとうございます。

この古墳の名前だけは聞いたことがありましたが、実質、知ったのはひでりんさんの記事です。
ひでりんの記事で概要は掴めていたのですが、評価するのに円墳の正確な位置と大きさに着目する
しかないと思い、半分仕方なく現地踏査した次第です。笑
とりあえず島状遺構ではないと判定しましたが、周濠の中に陪塚があるという事例も少ないと思う
ので、正直、祭祀用の中島バリエーションという推定も捨てきれないと思いますね。
栃木県の古墳は雑草が収束したら私も見学を再開しようと思ってます。先行して紹介して頂けるの
はとても参考になります。
島状遺構が畿内発祥だとすれば、断定はできないが栃木県にはおそらく無いかも知れませんね。
以前の記事でも書きましたが、栃木以北の領域は畿内の王権の力が十分に浸透出来なかった気が
します。それは前方後方墳の時代がやや長く続いたのと同じ根っこような気がします。言い換えれば
王権に対して独立性が比較的高かったのでは?もしそうであれば、畿内文化に積極的に染まることや、
移住者を受け入れる素地も薄かったのかも知れません。でもそんな時代も長くは続かなかったと思い
ますけどね。


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No Subject

形名さま、こんばんは。

以前にコメントでも書きましたが、私も飯玉神社には一度見学に行きました。
 境内の小円墳らしき高まりが島状遺構ではないかという想定はまったくしませんでしたが、あらためて形名さんの考察には説得力があります。。。
最近は私はもっぱら栃木県内の古墳をゆっくりとみて回っていますが、栃木には島状遺構を伴う古墳は存在しないようです。
地域によって様々な古墳の形態が存在することは、本当興味深いです。
2022-08-27-00:18 * ご〜ご〜ひでりん [ 編集 * 投稿 ]

形名 Re: No Subject

ご〜ご〜ひでりんさん、コメントありがとうございます。

この古墳の名前だけは聞いたことがありましたが、実質、知ったのはひでりんさんの記事です。
ひでりんの記事で概要は掴めていたのですが、評価するのに円墳の正確な位置と大きさに着目する
しかないと思い、半分仕方なく現地踏査した次第です。笑
とりあえず島状遺構ではないと判定しましたが、周濠の中に陪塚があるという事例も少ないと思う
ので、正直、祭祀用の中島バリエーションという推定も捨てきれないと思いますね。
栃木県の古墳は雑草が収束したら私も見学を再開しようと思ってます。先行して紹介して頂けるの
はとても参考になります。
島状遺構が畿内発祥だとすれば、断定はできないが栃木県にはおそらく無いかも知れませんね。
以前の記事でも書きましたが、栃木以北の領域は畿内の王権の力が十分に浸透出来なかった気が
します。それは前方後方墳の時代がやや長く続いたのと同じ根っこような気がします。言い換えれば
王権に対して独立性が比較的高かったのでは?もしそうであれば、畿内文化に積極的に染まることや、
移住者を受け入れる素地も薄かったのかも知れません。でもそんな時代も長くは続かなかったと思い
ますけどね。

2022-08-27-04:02 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]