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東国の古代史

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2019-02-25 (Mon)  22:09

古代氏族の系譜と実在性

古代史好きは天皇やそれを取り巻く氏族系譜を見ることが多いのですが、やけに長いし、こんなものが本当に信用できるのか怪しいと思うのが本音です。しかし、氏族系譜の実態を知れば何となく信用できる部分と胡散臭い部分の推定もできて興味も湧きます。そこで以下にどんな種類の嘘と本当があるのか、私が知る限りで分類してみました。尚、分類名は私の理解で付けているものもあり正しい専門用語ではありません。

(1)実在系譜

実際に血縁で結ばれた事実系譜です。
古代系譜そのものが氏族の権威付けのために作られる傾向にありますから、全て実在などというケースは滅多にないと思います。また、殆どが父系系譜に描かれていますが、怪しいところです。現実的に完全父系などありえないでしょう。また、実在系譜でも各個人の人格や事績が真実とは限りません。実在するが、その人物像はフィクションであり、ギャップのある場合が殆どです。脚色が極端な場合は、実在と言うべきか、架空というべきか悩むところです。特に事績創作のあるものを脚色実在系譜と呼びます。

(2)祖先人格化系譜

自分達の祖先に特定の事績を持った人物がいたことは確かだが、古い話で名前も分からない。何人いたのかもハッキリしない。そんな時、祖先を代表する人格を新たに起こす場合があります。そして、何人もの祖先が代々成し遂げてきた事績を架空の人物に託すのです。天皇家の例になってしまいますが、ヤマトタケルなどは天皇が各地に派遣した将軍をモデルに作られた人格でしょう。経過した時間の長さによって一人のこともあれば複数の人格を起こす事もあります。架空ですから厳密には実在しないのだが、モデルとなる人々がいたというケースです。

(3)共通祖先人格化系譜

(2)と同じですが、新たに起こされた架空の人格を複数の氏族が共有する場合です。一般的には、氏族名が異なっていても同族どうしの氏族が共有する場合が多いです。ある氏族が創作した祖先人格だったものが、後に縁故の氏族が共用するようになるケースです。300歳近くまで生きたとされる武内宿禰などは良い例でしょう。葛城氏、蘇我氏、巨勢氏、平群氏などの共通祖先ですが、もちろん架空です。

古代氏族系譜の実在性1


(4)擬制系譜

ある氏族が自分達をより権威あるグループの氏族系譜に組み込むことがあります。もちろん血縁はないのですが、婚姻関係、従属関係、同一神信仰などで深い縁がある場合です。系譜の作成には2通りあると思います。一つは親グループの中の人物を我が氏族の始祖として接続するケース。もう一つは、架空の人格をつくり、目的の系譜の中に挿入してそれを自分達の始祖とする方法。古代の系譜は、建前上、「父系系譜」になっていますが、直系に入れる場合と傍系として入れる場合があります。これで新たな親系譜グループの一員になります。たいていは天皇と縁のある大きな氏族のなかに組み込むために行います。こういうと、何かインチキのように感じますが、この方法は組み込まれる側の氏族も朝廷も暗黙公認と考えられます。

なぜ公認かというと訳があります。天皇とそれを取り巻く氏族というのは、会社の中の組織に似ています。大きな会社になれば、社長の下に平社員が何百人もいたら指示系統が多過ぎて回りません。そこで、部課長を作って指示は部門のトップに出せばあとは部門の中で回すようになります。この部門を氏族グループに置き換えたものです。細かい氏族がたくさんいるより、大きな氏族グループとして纏まっていたほうが便利なのです。

これは指示系統を簡略化するだけの効果ではありません。擬制系譜のメリットは、そのシステムが強い結束力で代々継承されていく事です。企業においてはビジネスライクな関係だけですが、擬制氏族の中ではもっと強い血筋や思想に近い結束力が代々継承されるのです。これは、束ねる天皇にとってはかけがえのないシステムとなります。

(5)共通擬制系譜

(2)と(3)の関係と同じです。親系譜の特定人物や組み込まれた架空の人物を複数の氏族が始祖として共用し
ます。この場合も共有するのは何かしら縁故のある氏族どうしです。

(6)粉飾架上系譜

氏族の系譜を作るうえで、世代の調整や系譜を長く古く見せたい場合に挿入する架空の人格です。例えば、天皇系譜でも欠史八代と呼ばれているが、第二代から第九代までの天皇は架空という説があります。天皇の始祖を古い時代に置いた為に天皇の数が足りなくなり、架空に天皇を挿入したと云われています。欠史八代が架空かどうかは別として氏族の場合もこれと同じことがあり得ます。事績の伝承が必要な場合は、創作するか、実在人格の事績を分割して設定します。

以上、6つあれば殆どの系譜は分類できるでしょう。


ではこれらを実際の系譜に当てはめてみます。あまり長い系譜では疲れるので、古代史本によく出てくる「さきたま稲荷山古墳」の「辛亥鉄剣銘文」を例にしてみます。辛亥鉄剣銘文には8代の系譜が記載されています。
          
古代氏族系譜の実在性2
 辛亥鉄剣銘文の系譜の推定分類(クリック拡大)

辛亥鉄剣銘文で実在性があるのは、オワケノ臣の祖父の代までの3代だけという説が有力です。その上の5代に付いては、他の氏族の系譜か、何らかの架空系譜と思われます。

オワケノ臣の父と祖父には、ヒコ・スクネ・ワケなどのカバネ的尊称がつかず、呼び捨てです。その上の5代とラストは、ヒコ→スクネ→ワケ×3→臣と変化しており、これは祖先系譜の類型パターンで非常に類例が多い。特に畿内の中央豪族に多い系譜パターンです。従って、類型パターンを使って全くの創作を行った
か、有力な他氏族の共通祖先人格化系譜に擬制系譜の手法を使って接続を図ったと考えられます。恐らく後者だと思います。

一番上のオオヒコは日本書紀に出てくる開化天皇の兄であるオオヒコという説があります。それが事実なら、書紀によるとオオヒコを始祖とする氏族は幾つかありますので、オワケ臣もそれらの氏族の可能性があります。阿倍氏や膳氏はオオヒコを始祖としてるので武蔵と関係が深いので可能性はある。系譜上ではオオヒコ以外の人名一致はないようですが、新撰姓氏録によるとオオヒコの子孫からは多くの氏族が発生したという伝承があるようです。その中にいるのかも知れません。

辛亥鉄剣銘文の例ではオワケノ臣と関係する系譜を特定できないため、分類名の適用は正しくないかも知れません。でもこのような系譜構成の基本が分かれば氏族系譜を見るのも興味をもって見ることができます。





参考文献  溝口睦子著  『日本古代氏族系譜の成立』
      溝口睦子著  『古代氏族の系譜』
      遠山美都男著 『天皇誕生』
      熊倉浩靖著  『古代東国の王者』
      金井沢良一対談集『古代東国の原像』
      小林敏男講演 『115文字の銘文が語る古代東国とヤマト王権』
      群馬県立女子大学「北川研究室」公開テキスト版『新撰姓氏録』
      ホームページ 『おとくに
       他



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No title * by 正宗
だいぶん前に「ルーツ探し」が流行ったことがありました。
僕もそこで自分のルーツ探しを空想、仮想、捏造でしたことがあります。
伝来の家系図なんて代物は有りません。
自分の苗字から遡っていきましたが確かなもの以前はこじつけで創作しながらです。
しかし平氏に行ってしまうので、好きじゃなかったので何とか源氏に辿り着くようにストーリーを捏造しました。
もちろん実際に作ったわけではなく脳内妄想です。
結局、本当のことは分からないので、その時々の過去の偉人たちの本を読みながらお気に入りの家系(傍流)に繋がるように妄想遊びをしていました。
漢の劉邦さんもその類かも。
あちらは歴史に名を残す偉人さんなのでそれなりに問題はあるでしょうけど僕のようなレベルでは遊びとして許される範囲ですね。
家の下の子が小学生の頃は「家は龍神族の子孫」なんてことも言ったことがあります。

No title * by 形名
> 正宗さん、こんばんは。
確かに一時ルーツ探しが流行りましたね。何がきっかけだったのだろう。日本人だけではないでしょうが、系譜を残している家なんて家柄のよい家系だけでしょうね。普通の家は6代くらいでもう分からなくなるでしょう。家系図を作るなら戸籍謄本を探るのが一番ですよ。たしか廃棄年数は決まっていなくて?家系が絶えても相当年数保持されるようです。謄本とるのはお金がかなりかかりますが、やって見る価値はあるでしょう。息子に血統を教えるよいチャンスかもしれません。

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No title

だいぶん前に「ルーツ探し」が流行ったことがありました。
僕もそこで自分のルーツ探しを空想、仮想、捏造でしたことがあります。
伝来の家系図なんて代物は有りません。
自分の苗字から遡っていきましたが確かなもの以前はこじつけで創作しながらです。
しかし平氏に行ってしまうので、好きじゃなかったので何とか源氏に辿り着くようにストーリーを捏造しました。
もちろん実際に作ったわけではなく脳内妄想です。
結局、本当のことは分からないので、その時々の過去の偉人たちの本を読みながらお気に入りの家系(傍流)に繋がるように妄想遊びをしていました。
漢の劉邦さんもその類かも。
あちらは歴史に名を残す偉人さんなのでそれなりに問題はあるでしょうけど僕のようなレベルでは遊びとして許される範囲ですね。
家の下の子が小学生の頃は「家は龍神族の子孫」なんてことも言ったことがあります。
2019-02-27-21:43 * 正宗 [ 編集 * 投稿 ]

No title

> 正宗さん、こんばんは。
確かに一時ルーツ探しが流行りましたね。何がきっかけだったのだろう。日本人だけではないでしょうが、系譜を残している家なんて家柄のよい家系だけでしょうね。普通の家は6代くらいでもう分からなくなるでしょう。家系図を作るなら戸籍謄本を探るのが一番ですよ。たしか廃棄年数は決まっていなくて?家系が絶えても相当年数保持されるようです。謄本とるのはお金がかなりかかりますが、やって見る価値はあるでしょう。息子に血統を教えるよいチャンスかもしれません。
2019-02-27-22:29 * 形名 [ 編集 * 投稿 ]