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東国の古代史

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2010-12-28 (Tue)  01:13

傷つく体と修復メカニズム(3)

従来は、下図にあるように修復はKU70とKU80と呼ばれる二つのタンパク質が輪のようになって切断部位を見つけてくっつき、そこに他の修復タンパク質を呼び込み修復が行なわれると考えられていた。しかし、KUタンパク質が働く前に事前段階があることが発見された。
 
 

 
 
 
細胞の中のDNAはクロマチンと呼ばれるタンパク質とのかたまりになっていて、DNAの配列体を取り出す為には、クロマチンを動かす必要があります。今回、クロマチンを動かすACF1という組織修復因子であるタンパク質が、新しく開発した方法でヒト細胞内に作った二本鎖切断に直接にくっついて作用する事が判明したそうです。
 
さらに、KUタンパク質は二本鎖切断が出来ると、このACF1に結合します。ACF1がなければ二本鎖切断にくっつくことが出来ず、修復もできないことが分りました。また、ACF1以外にもクロマチンを動かす多数のタンパク質も存在し、修復に必要であることも分かったそうです。つまり、これらのクロマチンを動かす因子も二本鎖切断修復の必須タンパク質だった訳です。
 
想像ですが、修復というのはタンパク質という分子レベルの結合という化学反応ですから、その反応を容易にするために、適切なタンパク質が切断箇所に集まり事前にクロマチンに作用して環境を整えてるのかも知れません。恐らく、修復の主体機能はKU70/80と、これが集める修復部材にあるのでしょう。しかし、KU70/80をDNA配列につなぎ止める足場の役目をするのが、ACF1を始めとするタンパク質群なのではあるまいか?具体的な作用が何であるのか興味のあるところですが、そこまでは報告書の中にも記載されていなかった。
 
もうひとつ重要な医療への影響ですが、これらの修復因子タンパク質は癌細胞の中では欠けているケースが従来から見つかっているそうです。癌細胞も全てが修復機能を持っているわけではないらしい。ということは、そのような癌細胞は二本鎖切断を修復できないということです。つまり、放射線や抗がん剤で二本鎖切断をつくってやれば癌細胞は傷を修復できずに死んでしまうのです。
 
この研究成果から期待できるのは、修復因子を持たない癌細胞であれば、抗癌剤や放射線治療が有効であることが治療前に判定できるということ。もう一つは、修復因子を持つ癌細胞でも、癌組織の中の修復因子タンパク質の活動を局所的に抑制できれば、癌組織の殺傷効果を上げられる可能性があるという事でしょうか。内容的にはDNAの修復メカニズムの解明という基礎研究ですが、この分野の研究は医療への影響が非常に大きいものだと云う事が分かります。 
 
 
 
 
【参考・引用】
■日経電子版プレリリース
■分子生物学術誌「Molecular Cell」ホームページ 



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